韓国で注目の「シニアインターン」とは何か ベテランの再就職の切り札になっている

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イ副社長がシンウネイチャーに合流したのは2015年10月のこと。大韓商工会議所からの紹介で入社した彼は、同年12月まで3カ月間をインターンとして過ごした。2016年1月に正社員となり、その後、副社長へ。わずか3カ月で高速出世を果たした。ただ、給与は最低限のレベルの賃金で約150万ウォン(約15万円)程度に過ぎない。「自分にとって仕事とは、もう人生を豊かにする遊びのようなもの」。イ副社長はこう言って笑う。

ソウル市江南区新沙(シンサ)洞の企画・デザイン会社のアイディーデザインビルにも、大企業出身のベテランが2015年10月からインターンとして合流した。キム・ギホ副社長(59)だ。キム副社長は1982年に金星社(コンピュータ事業)で社会人生活を始め、LGグループのLGCNSで15年勤務した後、現代情報技術、POSデータ社を経て、情報技術分野でベンチャーを立ち上げたことがある。

その後、事情があって会社をたたみ、現在インターンとして第2の人生を始めた。彼の業務は大企業・中小企業のシステム統合(SI)事業。月給は200万ウォン(約20万円)。彼は「ネットワークがなければ企業を発掘するのは難しい。幸いにもこれまで続けてきた業務分野なので、それほど負担はない」と言う。

ベテランの入社で業務遂行も円滑に

キム副社長は現在、同社の最年長者だ。社長は40歳代と比較的若い。アイディーデザインビルのチェ・ビョンホ取締役は、「業務の中では顧客企業とともに提案書を書くことが必要だが、その作業を円滑に進めることができる経験豊富な社員がおらず、これまでビジネス上のネックになっていた。キム副社長が入社したことで大きく改善された」と言う。

仁川市中区にあるKJインダストリー社は、エンジン組み立てや塗装、パッケージングを主力とする輸出専門企業だ。定年退職は65歳で、高年齢者が働きやすい企業でもある。実際に、シニアインターンの数も多い。韓国大手・斗山インフラコア社で定年まで働き、インターンとして入社した2人を含む計18人が働いている。51歳から63歳までと年齢も幅がある。

KJインダストリーのカン・シンチョル経営支援部長は「シニアインターンにはおおよそ20年以上勤務した後、再就職した人たちが多い。若い社員よりも業務への理解がすぐれ、誠実であるだけでなく組織内の摩擦も少ないという点も、シニアインターンを好む理由」と打ち明ける。

KJインダストリー資材課で働くパク・チンドさん(56)は、土木業で資材関連業務を担当した後退職し、9カ月ほど休んだ後にシニアインターンとして入社した。「休んでいたとき、実はとても不安だった。再就職は簡単ではない。65歳まで働けるというだけで感謝の気持ちしかない」と言う。

パクさんは「夜勤、特別勤務手当まで含めると月200万ウォン(約20万円)を超える。大学生の子どもが2人いて、まだ10年は働く必要がある」と笑う。

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