日本の「無戸籍者1万人」は、なぜ生まれるのか 「就学、結婚もできない現実」を生む5つの謎

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――「子どもが無戸籍になるのは、妻の不倫の結果だろうから仕方がない」という声も一部にあるようですね。それについてはどう思いますか。

無戸籍の子どもと親に対して、そうした言葉を投げつける人がいるのは事実で、とても残念なことです。

離婚前に夫以外の人の子を妊娠したという場合もありますが、単純にいわゆる「不倫」とは言い切れないケースがほとんどです。夫のDVで家を出て、長く離れていても離婚ができない状況にあった場合や、離婚を決めて届けを夫に出して別れたはずなのに離婚届が提出されていなかった場合など、すでに結婚が破綻し、民法の上でも「不貞」とは判断されないケースが多いのです。

でも、たとえ不倫であったとしても、生まれた子どもへの差別は許されないことです。

――それ以外にもいろいろな事情で無戸籍になってしまう人もいるようですね。

経済的、環境的状況のせいで、親が出生届を出せなかった場合などもあります。そのあたりも本に詳しく書いていますが、いかにさまざまな形で無戸籍の人が生まれているのか、わかっていただけるかと思います。

ただ、よしんば親に落ち度があって子どもが未届けとなっていたのだとしても、その子どもには何か罪があるでしょうか。まったく罪はありませんよね。むしろ、現場で見ていると、親の庇護が受けにくいぶん、そうした子どもには、より手厚い支援が必要だと私は思っています。

でも、現状はさまざまな不条理を子どもたちに背負わせ、苦労させて、そのまま放置です。これはなんとしても正したいことだと思っています。

謎3 無戸籍者はいったいどんな生活を送っているのか

――誰もが持つ疑問として、「無戸籍の人はいったいどんな人生を送っているのか」というのがあると思います。

無戸籍に陥るということは、そうなってしまう背景というのがあって、そこには多くの場合、貧困、虐待、暴力の闇が広がっています。私も実際に支援してきて、信じられないような現実をいくつも見てきました。

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