住友金属鉱山、銅で巨額の減損と投資のナゾ 銅と金の絶妙なバランス

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モレンシーの追加投資と同時に発表した「2015中期経営計画」では、「売り上げ1兆円、純益1000億円」という長期ビジョンの数字を変えなかった。住友金属鉱山の自信の表明である。

では、ここから先、資源メジャーが切り出す銅山の権益をさらに買い募るのだろうか。よほどの"お宝"なら話は別だが、新しい中計で住友金属鉱山が注力する分野は金(ゴールド)と新材料だ。

バランスこそ要諦

同社がドメインとする資源は銅、ニッケル、金の3つ。銅、ニッケルについては長期ビジョンの各30万㌧、15万㌧の権益確保にメドがついたが、金は目標30㌧に対して現在まだ16㌧。「従来、金は新山の探鉱で、と言ってきたが、(既存金山の)権益取得を含め、積極化する」(中里社長)。

30年前、住友金属鉱山が初めてモレンシーに出資したとき、銅市況は1400ドルを切っていた。米国経済誌が「鉱山の死」と書き立て、当時の所有者、フェルプス・ドッジはニューヨーク5番街からアリゾナ州フェニックスに都落ちするまで窮迫していた。

そのとき、住友金属鉱山が買った持ち分12%の値段は7500万ドル(!)。が、いかに割安でも、1400ドルの市況なら、買った瞬間に赤字になる。それでも決断できたのは、その前年に世界屈指の金山、菱刈鉱山が開山していたからだ。

金の利益を銅に変え、今度は銅から金へ。市況激動が宿命なら、財務も資産構成も、バランスこそが生き抜く要諦であること。その一事を住友金属鉱山は骨身に叩き込んでいるのである。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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