寝酒でぐっすりは大間違い、大量飲酒で依存症の恐れ《特集・差がつく睡眠力》

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 そもそも「アルコールは少量だと逆に覚醒作用があり、飲める人はかえって目が覚める。だから、寝酒の場合、量をたくさん飲む人が少なくない」(樋口氏)。

だが、お酒が強くない人でも、毎日続けていれば、少量のアルコールでは眠れなくなる。今までと同じ摂取量では足らず、寝酒の量がますます増えていく。このように、薬物を摂取し続けているうちに効かなくなり、同じ効果を得るには量を増やさなければならなくなるのを耐性という。もともと飲める人なら、連日の大量飲酒にもなりかねない。

大量飲酒を続けると、今度は眠り全体の質が低下していく。深いノンレム睡眠が少なくなり、レム睡眠が増えるなど、眠りのパターンが崩れてしまうのだ。

こうした状況を招かないためには、寝酒をやめることが第一。ところが、連日大量に飲酒している人が急にやめると、今度はなかなか寝つけなくなる。眠れたとしてもノンレム睡眠が減ったままで、眠りが浅い。「つねに大量飲酒をしている人の眠りのパターンは、高齢者のそれに似ている。つまり、『眠りの老化』が起きている」と樋口氏。さらに、「飲酒すると咽頭部の筋肉が弛緩したり、気道がむくんだりして、睡眠時無呼吸症候群を悪化させるなど、他の睡眠障害の症状にも影響を及ぼす」とも指摘する。

眠れないから寝酒を飲む。寝酒を飲んでも眠れないから、ますます大量に飲む。それを続けていれば、さらなる危険が待っている。アルコール依存症だ。

アルコール依存症は、もはや飲酒のコントロールが効かない状態だ。最後に飲んでから4~12時間経つと、動悸、不安焦燥感、体の震えといった離脱症状が起こる。内臓障害を引き起こすケースも多い。断酒に成功し、10年間飲まずにいても、一度の飲酒で再び逆戻りすることも珍しくない厄介な病気だ。

断酒後も回復遅い眠りのパターン

不眠も深刻化する。アルコールが切れていると寝つきが悪くなり、眠れたとしても、深いノンレム睡眠が少なく、脳が休まらない。断酒後、眠りのパターンが回復するまでに平均で2~3週間を要する。

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