もう企業は信じない?米国の若者の「悟り」 アメリカンドリームは「夢のまた夢」

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ミドルクラスは日本語にすると「中流」です。戦後、昭和の日本は「一億総中流」と言われるほど、多くの人が等しく豊かさに恵まれ安定した経済の基盤となってきました。

米国も同じ時代に厳しい人種差別や貧困、格差などの問題を抱えながらも、「多くの人が等しくチャンスをつかめる。アメリカンドリームの国」であることを証明してきた原動力は、社会のど真ん中にずっしりと腰をすえた正直で勤勉なミドルクラスの存在でした。米国の良心・パワーの源はミドルクラスなのです。

アメリカン・ドリームの象徴「ミドルクラス」が消える

ところが昨年末発表されたピュー研究所の調査結果によれば、1971年には米国の61%を占めていたミドルクラスが、2014年には50%まで減っていることがわかりました。米国のパワーの源は今や少数派になろうとしています。さらにそれと比較して、アッパークラスの方は4%から9%に増加、さらにロワークラスは16%から20%に増え、はっきりと二極化が進んでいることがわかります。

こんな調査もあります。2008年に自分はミドルの中でも上位、または中間クラスと考えている人が7割以上でしたが、2014年にはそれが6割以下になり、逆に下位と自覚する人は25%から40%に増加。つまりミドルクラス全体が「自分たちは貧しくなった」と感じているのです。

「ミドルクラス」は減少するだけでなく、その中でも豊かさを感じられない人が増えている……この現実にアメリカ人は足元がガラガラと崩れていくような危機感を感じています。

さらにリーマンショック後2009年から2013年の間に、所得増加の95%は上位1%にもたらされているという調査があります。日本でも「格差」という言葉が言われるようになってもう10年くらい経ちますが、アメリカのそれとは比べ物にならないのが実情です。当然ミドルクラスはその恩恵を受けていません。景気回復のスピードと連動して、持てる者がますます豊かになり、そうでないものはますます貧しくなる時代。下半分にいるミレニアルズの多くは、「どんなに頑張ってもアメリカンドリームは実現できないかもしれない」と感じているのです。

そんな中、2016年1月下旬、アメリカ連邦準備銀行ニューヨーク支部が興味深いデータを発表しました。

リーマンショック以降の若者の労働市場は長く低迷し、16歳から24歳の失業率は減少傾向にあるものの、2015年12月には11%と、全米平均の5%に比べると依然高い数値を示していました。また大卒でスターバックスのバリスタをするなど、学歴に見合った仕事が得られない状況にスポットが当てられていました。

ところが昨年、大卒の若者の収入が急速に回復し、2003年以来最高の数値を示したというのです。2015年に大卒の若者(22歳〜27歳)が稼いだ年収は中央値で4万3000ドル(約520万円)となり、前年から3000ドル以上増えました。少なくとも大卒の所得は過去最高に近い水準にまで改善したというわけです。この報道は多くの若いミレニアルズに希望を感じさせました。

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