アメリカで「タカタ批判」が高まっている理由 自動車各社との支援協議は難航も

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これまでの米国でのリコール数は約2900万個。ロイターの取材では、NHTSAは新たに最大9000万個のリコールが必要かどうかを調査中で、米国世論が高まれば同国で新たなリコールに踏み切る可能性がある。その場合の追加費用は1兆円超に及ぶとの試算もある。

現在、原因究明に向けて3つの調査が進行している。タカタの自社調査、日米欧の自動車メーカー10社の共同調査、リコール数が最も多いホンダ<7267.T>の独自調査だ。

23日には10社から委託された米調査会社が、乾燥剤なしで火薬原料の硝酸アンモニウムを使う、高温多湿の環境で長期間さらす、インフレーターの組み立てでの湿気防止対策が不十分──という3つの要因が重なって異常破裂につながったと発表。これを受けてタカタも同日、自社が委託していたドイツの研究機関の調査結果と「一致する」との声明を出し、25日には自動車各社に同結果を報告した。

だが、両結果とも「これまでの見解を並べただけで、原因も責任の所在も依然あいまい」というのが自動車メーカー幹部らの印象だ。両調査は今も継続中だが、「最終報告が出ても中身はさほど変わらないのでは」との声も漏れる。ホンダが米社に委託して進めている調査は3カ月後にも一定の解析結果が出る見込みだが、関係者の1人は「ホンダと先の2つの結果に差があれば、協議は進みにくい」と話す。

悩ましい自動車各社

関係者らによれば、タカタは高田重久会長兼社長らが経営責任を取って辞める意向を示しているほか、企業法務や事業再生に詳しい弁護士らなどの外部専門家からなる委員会が主体となり再建計画の策定に取りかかっている。

また、交換用インフレーターの安定供給を目指し、硝酸アンモニウムとは別の火薬原料で作っているダイセル<4202.T>と共同出資の開発生産会社を設立する方向で検討に入っている。

交換部品不足は続いており、ホンダが2月5日に実施を発表したリコールも、部品交換開始は6月からと4カ月も先になる予定だ。同社は生産・開発中のモデルにはタカタ以外を使用しているが、交換用としては段々減らす方向にはあるものの、今は硝酸アンモニウムを使用したタカタ製を一部使わざるを得ないという。 関係者らの話では、タカタは1月29日の会合で、自動車各社に事業再建に向けた取り組み内容を説明。また、自社の資金捻出能力を超える費用については自動車各社に全額負担を要請し、エアバッグ問題に関連して発注を控えている他の製品での取引も再開するよう求めた。

自動車各社の支援の方向性については「最大顧客のホンダに追随することになるだろう」(某自動車メーカー役員)との見方が多いが、ホンダの八郷隆弘社長は24日、「経営支援は考えていない」と発言している。タカタが予定通りに協議を進めて支援を受けられるかどうかはまだ不透明だ。

 

(白木真紀、田実直美、浦中大我 編集:北松克朗)

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