旭テック子会社倒産の「なぜ」と「これから」--入交昭一郎社長に聞く

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入交昭一郎社長は本田技研工業時代、F1レース用エンジンの開発で名を上げ、本田技研工業副社長、本田技術研究所社長を歴任した。GMからスピンアウトした米自動車部品会社大手、デルファイの社外役員も務めた入交氏は、自動車技術に関して最も深い洞察力を持つ経営者の一人だ。入交氏にエコカーの行方について聞いた。

--今、ハイブリッド車が売れているが、7月には三菱自動車が初の量産型電気自動車(EV)を発売し、来年は日産も後に続く。EVはエコカーの主流になれるだろうか。

25年間は主流になれない。何よりも、リチウムイオン電池の限界がある。三菱自動車のEVはモード走行で160キロメートル走ると言うが、モード走行と実際の走行はだいぶ違う。実際の走行距離はせいぜい100キロだろう。僕は東京から(旭テックのある)掛川まで自動車通勤しているが、走行距離は220キロ。100キロではどうしようもない。次世代バッテリーが開発されれば、1度の充電で走れる距離は大きく伸びると言う。が、そんな電池はどこにある。リチウムイオン電池でさえ、パソコン用から始まってここまで来るのに20年かかった。今の5倍の容量の電池が実用化されるには後20年かかる。

--自動車業界はエンジン(内燃機関)を軸に技術開発を進めてきた。EVによってエンジンがモーターに取って代わられると、自動車業界の蓄積が否定される。業界の大半がEVに冷淡なのは、現在の産業構造を崩したくない、という思いがあるのではないか。

EVと言ってもエンジンがモーターになるだけで他は何も代わらない。しかも、エンジンのコストは全体の20%以下。EVではその20%がモーターと電池に代わるわけだが、トヨタにしろホンダにしろ、モーターの内作を始めている。メカニカルなものは全部、自動車メーカーが内作する。だから、EVになっても、シリコンバレーが自動車市場に入ってくる余地はない。

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