JR西日本の「罪と罰」、社長の起訴でも根本問題は未究明

JR西日本の「罪と罰」、社長の起訴でも根本問題は未究明

JR尼崎駅から線路沿いに徒歩約20分。列車が車体を傾けながら窮屈そうに通過する左折れのカーブ。2005年4月、この急カーブに時速110キロメートル超の猛スピードで列車が突入した。

107名の死亡者を出したJR福知山線の脱線事故で、JR西日本の山崎正夫社長は8日、神戸地検から業務上過失致死傷罪で起訴された。現職社長が起訴されるという異例の事態。「起訴という事実を真摯に受け止めなければならない」。同日開いた会見の席上、山崎社長は辞意を表明した。後任には佐々木隆之副会長が就任する(8月31日付)。

1996年に現場を急カーブに付け替えた際、山崎社長は常務取締役鉄道本部長だった。事故の可能性を予見できたのに自動列車停止装置(ATS)の設置を怠ったと地検は判断した。山崎社長は「裁判所の判断を仰ぎたい」と、予見性をめぐって争う姿勢だ。

JR西は事故後、社内改革を一貫して進めてきた。経営幹部が現場職員と意見交換する「安全ミーティング」を6500回も開催(08年度末時点)。ATSよりも細やかな制御ができるATS-Pの整備も促進、11年度末には関西圏の在来線のうち約97%に設置する計画だ(現79%)。

もっとも、根本的な問題が残る。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が懲罰的な日勤教育や過密ダイヤを事故の背景として指摘したが、JR西自身はいまだに、事故を招いた構造的な企業体質については明らかにしていない。

JR西の安全推進有識者会議メンバーで関西大学の安部誠治教授は次のように指摘する。「公判では山崎社長個人の責任が争われることになり、最も重要なJR西日本の組織的な責任は追及されないのではないか。そうなれば安全への姿勢や、厳しい労務管理、また井手正敬・元会長のワンマン経営による企業体質など、事故の背景にあった企業の問題を明るみにできないおそれがある」。

脱線列車が激突したマンションは、今も当時の姿のまま。えぐられた壁や曲がった鉄筋は事故の壮絶さを物語る。マンションの敷地内にある献花台には無数の花が供えられている。社長起訴で区切りを迎えたわけではない。事故の真の原因は何か--。JR西はこの問いに、正面から相対しなければならない。

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(梅咲恵司 =週刊東洋経済)

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