中国の上半期GDPは7.1%増、通期8%成長達成に一歩近づく

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その例としてあげられたのが、上期の輸出が21.8%も落ち込んだことだ。6月も21.4%減で、なお低迷が続いている。そのため、産業によっては過剰設備の問題が深刻だ。昨年9月からマイナスが続いた粗鋼生産は5月にプラスに転じ、上期トータルでは前年同期比1.2%増の2億6658万トンとなった。これは過去最高の水準だが、李報道官によれば「第2四半期には、鉄工業では生産能力の73.1%しか使われなかった」という。

まだら模様の実体経済とは対照的に、株価は年初から7割も上昇しており、同じく高値圏にある不動産価格同様にバブル化を心配する声も国内にある。マイナスを続けてきた消費者物価指数は、6月も前年同期比1.7%減(食品・エネルギーを除いたコアCPIは1.4%減)という水準だった。だが、当局の指導による銀行貸し出しの増加を受け、6月末にはマネーサプライ(M2)が前年同期比28.5%という高い伸びを示した。これが将来のインフレリスクにつながることが懸念されている。

温家宝首相は7月7日、9日の両日、李克強、王岐山の両副首相ら経済担当の最高幹部らと会議を開催。7月10日に出した声明では「経済はよい動きを見せているが、困難な時期が過ぎ去ったことを意味しない」との認識を示し、「積極的な財政政策と適度に緩和された金融政策の堅持」を再確認した。

600万人を超える大学新卒者の就職、さらに新彊ウイグル自治区での民族衝突など、社会の不安定要素が存在する中で、成長の維持は至上命題だ。一方で、インフレもまた中国の安定維持には大きなリスクとなる。ひとまず景気の底割れは回避したものの、中国政府は今後も難しいかじ取りを迫られることになる。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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