鳩山「路線転換」隠れた理由

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鳩山「路線転換」隠れた理由

塩田潮

 自民党内の麻生降ろし反乱劇は結局、「真夏の一夜の夢」に終わりそうな気配だ。 それにしても、「万年与党」の野党転落前の「悪あがき」は想像以上の見苦しさである。

 一方の民主党では、次期総選挙での単独過半数が視野に入り始めて、いま注目すべき動きが出てきた。鳩山代表が外交・安保・憲法の問題でそろりと小沢路線からの転換に乗り出したように映る。小沢氏は党内の旧社会党出身者との結束や社民党との連携に腐心し、国連中心主義、自衛隊海外派遣反対、ひとまず護憲という路線を取ってきた。ところが、改憲論を公言する鳩山代表は日米同盟重視で、自衛隊海外派遣問題や非核三原則でも「見直し」に含みを持たせる。岡田幹事長も過去の言動を見ると、基本的には鳩山路線に近いと見られる。とはいえ、鳩山代表が小沢前代表を無視して勝手に路線転換に踏み出したとは思えない。そもそも小沢氏は旧社会党出身者や社民党の抱え込みを重視して戦略的に前述の路線を取っただけで、もともとの考え方は鳩山代表と差がなかったのかもしれない。

 鳩山代表は先日、「来夏の参院選で民主党が単独過半数に届けば、社民党などとの連立解消も」と口を滑らせた。つい余計なことを言ってしまう悪い癖が出たと言われたが、昔から言わないほうがいい「本音」を漏らして物議を醸すことは少なくなかった。
 その「本音」とは何か。社民党も福島代表ら護憲派を別にすれば、いまや民主党への合流を望む人が多いといわれている。鳩山代表も小沢氏も、数さえ確保できれば問題ないから、民主党が路線転換を図っても大丈夫と踏んでいるのだろう。だが、もう一つ、別の隠れた狙いもあるのではないか。鳩山路線と同じ考えの人は自民党に多い。野党転落後の自民党からの離脱者の取り込みや、もしかすると民主党と自民党との大連立への布石という疑いも生じる。自民党の「悪あがき」の裏側で、政界再編のきな臭い匂いも漂い始めた。  
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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