通信業界は、信用力見通しは安定的も、景気低迷で中期的な成長余地が一段と狭まる懸念《スタンダード&プアーズの業界展望》


スタンダード&プアーズ
事業会社・公益事業格付部
主席アナリスト 小林 修

 日本の大手総合通信事業3グループである日本電信電話(NTT、会社格付け「AA/安定的/A‐1+」)、KDDI(格付けなし)、ソフトバンク(BB/安定的/--)は、おおむね安定的で高い収益力とキャッシュフロー創出力を維持している。

2009年3月期の連結決算は、NTTが2.5%減収、3.0%営業減益(前年度の代行返上益等の特殊要因除き)となったものの、営業利益は1兆1000億円を超える水準を維持した。連結子会社であるNTTドコモ(AA/安定的/A‐1+)に限れば、5.6%の減収にもかかわらず2.8%の営業増益となった。KDDIは0.5%減収、6.0%営業増益、ソフトバンクも3.7%減収、10.7%営業増益と、減収増益傾向はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに共通している。

これは、各社の最大の収益事業である携帯電話事業で、携帯電話端末価格と通信・通話料金の区分けを明確にし、端末価格を引き上げる代わりに通信料を安くする「分離プラン」が定着した結果、携帯端末の販売が大きく減少すると同時に、顧客獲得費用も低下して足元の収益改善につながったためである。

 景気の低迷は通信業界にも悪影響を及ぼす懸念

スタンダード&プアーズは、通信事業は景気変動の影響を受けにくい産業の一つであり、日本の通信業界は大手3グループによる寡占が継続していることもあって、世界的な景気低迷が続く局面でも信用力が比較的安定して推移するセクターの一つと考えている。

しかし、昨年から携帯電話端末の販売が大幅に減少し、将来的な事業の柱と期待されているFTTH(光アクセス・ブロードバンド)サービスでも新規加入者の伸びが鈍化している背景には、端末の店頭価格が上昇して頻繁な買い替えが抑制されたり、市場の成熟化が進んできた要因に加えて、景気の悪化も一定程度は悪影響を与えているとみている。

今後、景気の低迷が長期化し、失業率の上昇や賃金の低下が続けば、家計における通信費の見直しが一段と進む可能性がある。このため、景気の低迷に対応して、各社が顧客獲得費用を積み増し、営業関連費用が増加するリスクも無視できないと考えている。

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