日本経済、カンフル剤効果が切れ「逆J」字型の尻すぼみに

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 「エコカー減税と定額給付金の効果で、低公害車の受注は堅調」(四国地方の乗用車販売店)、「週末は高速道路料金引き下げ効果もあり、県外の個人客で平日の売り上げ減少を穴埋めしている」(北陸地方の高級レストラン)。

“肌感覚”で景気を語れる人たちの声を拾い上げ、指数化した「景気ウォッチャー調査」。5月分の同調査のコメントには一連の景気刺激策の好影響に対する言及が目立った。

短期的にはV字回復 生産の持ち直しが牽引

みずほ証券の飯塚尚己シニアエコノミストが1~5月調査のコメントを対象に「景気対策」「エコポイント」など七つのキーワードが使われている件数を調べたところ、3月から急増していることがわかった。4月には473件に達した。「短期的にはV字回復との見方が広がっている」というのが飯塚氏の見立てだ。

実質GDP(国内総生産)は2008年10~12月期、翌09年1~3月期と2四半期連続で前期比年率2ケタのマイナスと、大幅な落ち込みを記録した。しかし、4~6月期は水面上に浮かび上がるとの見通しがコンセンサスになりつつある。

政府の6月の月例経済報告では、基調判断から「悪化」の2文字が消えた。「回復の持続性にははなはだ疑問が残るが、方向を見れば上向きと考えざるをえない」(内閣府総括担当の西崎文平参事官)。政府も事実上の「底打ち」を宣言した。

先行き悲観論一色だった景気のベクトルを変えた最大の要因は生産の持ち直しだ。鉱工業生産指数は3月から3カ月連続で前月比プラス。4、5月はいずれも5・9%増と過去2番目の伸び率になった。

景気対策が個人消費などの押し上げにある程度寄与しただろう。定額給付金などの効果をめぐっては見方が分かれるが、「プレミアム商品券などの購入支援策を併せて実施したのが奏功した」(第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミスト)。

世界各国が一斉に大規模な財政出動を行ったことも、外需依存度の高い日本の生産増につながった。日銀発表の実質輸出入(季節調整済み)によると、実質輸出は2月で底打ち。4月は前月比約8%増、5月も約5%増と高い伸びが続く。「最終需要の先行きは不透明だが、大きく落とした生産を正常化させる過程で、輸出に占める中間財のウエートが高い日本には追い風が吹いた」(クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト)。


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