エコ景気刺激効果は失速へ、需要を先食い、迫る2番底の恐怖

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エコカー減税導入後も前年同月割れ止まらず

「ガソリン代と高速料金が下がり、交通量はかなり戻ってきた。ちょうどいいタイミングで補助金が出る」。習志野以南の千葉県一帯にディーラー網を持つ日産サティオ千葉。千葉市美浜区にある中央店の前を走る国道14号線のラッシュを眺め、「去年の今ごろはがらがらだった」と鈴木優巳社長は振り返る。

昨08年の国内自動車販売は前年比6・5%減の321万台と、石油ショックが起きた1974年以来の低水準に終わった。クルマがこければ、日本もこける。自動車産業は完成車と部品を合わせ日本の総輸出額の4分の1を占める“優等生”。メーカー、ディーラーから商業車の運転手や整備士まで入れれば日本の労働人口の8%が自動車関係者だ。設備投資や部品調達を通じて産業機械や金型・鋳物、素材産業にも多大な影響を与える。

そんな中で政府が導入したカンフル剤が09年4月の「エコカー減税」。ハイブリッドカーや電気自動車など環境に優しい「次世代車」の自動車取得税と自動車重量税を減免する措置である。減税幅はハイブリッドカーや電気自動車の100%免税を筆頭に、負荷の度合いによって3段階に分かれている。

これに危機感を持ったのが日産自動車だ。日産には100%減税対象車がクリーンディーゼルのエクストレイルしかない。そのため、「昨年12月に減税の情報を得た時点で対応を進めた」(志賀俊之・日産COO)。75~50%減税対象車種の豊富さをアピール、「ハイブリッドカーだけがエコカー減税の対象じゃない!」と宣伝を打った。

フタをあけてみれば、4月の登録車(全メーカー計、軽自動車含まず)の販売は前年同期比29%減、5月も19%減と低調だった。間を置かず、13年以上の古い車からの買い替えに補助金を交付する案が浮上したからだ。減税と補助金ダブルの恩恵を狙った買い控えが起きたのだ。

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