欧州で大きな踏切事故がなぜ減らないのか? オランダでは立体交差化が進みにくい事情も

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オランダ・ホールン駅構内にある踏切。バリアフリーの観点から踏切を残している駅もあり、これとは別に跨線橋も設置されている

オランダ国内では、2015年の1年間に30件の重大踏切事故が発生し、13人が命を落とした。日本国内における踏切事故の数と比較して、むしろ少ないという印象を受けるかもしれないが、オランダを含む欧州では、ローカル線でも日本の在来線特急列車並みの120km、場所によっては更に高速運転を行なっている路線もあり、衝突をすれば大事故となる可能性が非常に高い。

オランダは国土のほとんどが低地で、海抜0メートル地帯も多い。オランダ特有の軟弱な地盤の場所が多く、場所によっては穴を掘ると砂地が現れ、杭が打てないような場所もたくさんあるそうで、立体交差化をするのには難工事と高額な建設費が掛かる。

オランダの首都、アムステルダム市内に建設中の地下鉄新路線は、工事がスタートしてもう何年も経過しているが、この非常に軟弱な地盤の影響で大幅に時間が掛かっているだけでなく、建設費も膨れ上がっているため、まだ具体的な開業時期がわからないとのことだ。

主要幹線ならいざ知らず、列車本数がそれほど過密ではない路線の場合、投資金額に見合った効果が薄いため、簡単に工事ができないという事情がある。

バリアフリーも理由のひとつに

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オランダに多く存在する珍しい鉄道の昇開橋は、船が航行する時だけ開閉する

一方、それとは別に、バリアフリーの観点からあえて構内の踏切をそのまま存置している駅も見かける。通常、バリアフリーというと跨線橋にエレベーターを設けるというのが一般的だが、列車本数が少ない小さな駅の場合は、跨線橋とは別に構内踏切を残している駅を見かける。確かに、上下の移動を極力なくし、平面だけで移動できるのであれば、それに越したことはない。

また、踏切とはちょっと異なるが、オランダ国内には多くの列車用昇開橋(跳ね橋)が存在する。前述の通り、軟弱地盤が多いために大型船が航行できるような立体交差を頻繁に設けられないことや、費用対効果が低いことを理由に、船の航行中だけ開閉する橋が設けられているのだ。この橋は、列車運行時間帯には通常ほとんど開閉することはないが、筆者は一度だけ、乗車中に列車が停止し、船が通過するのを待った経験がある。

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