混乱が際立つ郵政民営化問題、与野党は責任ある対応を

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 日本郵政グループの事業に対する批判の中にも、理解を超えたものがある。その一つがゆうちょ銀行のクレジットカード事業に対する批判である。ゆうちょ銀行が2008年5月に開始したクレジットカード事業は、キャッシュカードと一体型のクレジットカードの取り扱いであり、そのために、ゆうちょ銀行は外部委託方式を採用した。

クレジットカード・ビジネスには巨大なコンピュータシステムの導入が不可欠であり、それに要する莫大なコストを回避するために、有力カード会社に業務を委託するアウトソーシングは合理的な選択といえる。そして、ゆうちょ銀行は、数多くのクレジットカード会社を審査したうえで、三井住友カードとJCBを業務委託先に選定し、事業を開始したという経緯がある。

この事業について、最近、民主党などの議員の中に、「三井住友カードに対する40億円の外部委託費は極めて高い」と批判し、三井住友カードを選定したことを三井住友銀行出身の西川社長との関連性で問題視する向きがある。しかし、結論的に言えば、この批判は的外れだ。

クレジットカード・ビジネスの業務受託は、委託先のビジネス形態に併せたシステム開発など巨額の投資を必要とする。それでも、三井住友カードが受託したのは、ゆうちょ銀行のクレジットカード事業の将来性に期待しているからこそだろう。しかし、あくまでも推測の域を出ないとはいえ、その償却負担を踏まえると、三井住友カードは当分、採算を維持することが困難であるはずだ。

このままでは内部崩壊も

さらにこの問題をめぐっては、「過去、日本郵政公社が行ってきた共用カード方式のクレジットカード事業と比べると、費用が大きすぎる」と指摘する議員もいる。しかし、これは比較するほうに無理がある。共用カードは、日本郵政公社のキャッシュカードと、民間クレジットカード会社のクレジットカードを一体化させたものであり、日本郵政公社が利用者に提供していたのはキャッシュカード機能だけだ。つまり、共用カードと現在のゆうちょクレジットカードは、外見上似通っていても、似て非なるものなのである。

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