オーガニック食品が健康にいいとは限らない 有機畜産物が体にいい本当の理由とは

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大昔、人間はオメガ3とオメガ6を同じくらいの量、摂取していた。今日では、米国人のほとんどはオメガ3よりもオメガ6(一部の植物油や揚げ物に多く含まれる)をたくさん摂っているとされるが、こうした摂取量のアンバランスが健康に悪影響をもたらすとの説もある。

鶏肉を食べた方が健康的?

ハーバード大学公衆衛生大学院栄養学部のウォルター・ウィレット学部長は電子メールで取材に答え、有機牛肉とそうでない牛肉の差は微々たるもので、どちらも飽和脂肪酸の量が多い点では同じと指摘した。

「赤身肉を鶏肉や魚に置き換えるほうが、脂肪酸の違いはずっと大きいし体にもいい」とウィレットは言う。

ただし、魚の摂取を増やすよう呼び掛けることには問題もある。もしみんながそれに従ったら、川や海や湖から魚がいなくなってしまうからだ。

トロント大学のバジネットは、有機肉や有機牛乳への切り替えを呼び掛けることは「以前から食べている食品でアプローチする手段」かも知れないと言う。

バジネットによれば、健康効果を得るにはオメガ3の摂取量を1日あたり200ミリグラム増やす必要があるとの研究結果があるという。だが、有機牛肉に切り替えても摂取量は50ミリグラム増えるだけだ。「1日1回、牧草で育てた牛肉を食べるだけでは不十分だ」と彼は言う。

もっとも、それに加えて有機牛乳をコップに2杯ほど飲めば「効果は出るだろう」とバジネットは言う。「あくまで仮説だが」

専門家は、有機食品の健康効果をめぐる疑問を正面から検証しようとしている。

ニューカッスル大学のライファートによれば、有機食品を食べている女性の子供は一部の病気にかかりにくいことを示す研究も複数あるという。ライファート自身、有機食品がラットの健康にもたらす効果を調べる実験を行っている。今のところ、残留農薬については確認できるレベルの影響があるようだ。

「死に至るほどの影響があるかどうかはまだ分からないが、ホルモンバランスに影響を与えているのは分かっている」と彼は言う。「ちょっと考えさせられる話だ」

(執筆:Kenneth Chang記者、翻訳:村井裕美)

© 2016 New York Times News Service
 

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