民主党は消費者所得をどこまで増やせるか--リチャード・カッツ

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(1)道路関連プロジェクトに向けられる資金を削減して、毎年2兆6000万円の減税を行う。
(2)高速道路料金を2兆円引き下げる(家計部門の所得の0・5%)。
(3)子供が義務教育を終えるまで毎年1人当たり31万2000円の手当を支給する。これによって家計部門の所得は年間4兆6000億円増加する。
(4)公立高校の費用全額を負担し、私立高校の生徒を支援するために毎年12万~24万円を支給する。仮に授業料が免除されていても、子供が公立高校に通っている一般の家庭では子供1人当たり51万6000円も支出している。さらに、
(5)中学を卒業するまで子供の医療費は免除する。
(6)中小企業の法人税率を半分引き下げて11%とする。

実質賃金を上げるための民主党の政策提案

消費者の所得が順調に増えれば、成長の原動力は政府の政策ではなく、労働市場や投資市場によって決まる。その結果、成長は高められるだろう。そのためには、もっと構造改革が必要である。だが、構造改革に関する民主党の見解はまだあいまいである。

家計部門の所得が十分でない最大の原因は、2001年以降、実質賃金が7%減少していることだ。その要因は、低賃金の“非正規雇用”が労働者の3分の1にまで増えたことである。非正規雇用の活用は両刃の刃である。労働市場の規制緩和を進めた要因の一つは、労働市場の硬直性を克服することにあった。日本では中堅社員がよりよい賃金と昇進を求めて会社を替わることは難しい。企業も余剰社員を簡単には解雇できないため、最初から多くの社員を雇用するのに躊躇している。しかし、労働市場の流動性を高める政策の副作用は、企業が実質賃金を切り下げたため消費者の購買力が低下する結果を招いてしまったことだ。その結果、日本は需給ギャップを埋めるために輸出に依存しなければならなくなった。

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