高コスト体質の百貨店業を根本から変えていく--近鉄百貨店・飯田圭児社長

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百貨店は高コスト体質で損益分岐線が高い。それを解消するために、アイテム、価格帯ともに商品の幅を広げ、また客層も広げていく努力をしないとやっていけないだろう。これまで、高質商品を売るために、外商を含めて相当な人件費をかけてきたが、こうした体質を洗い直しながら損益分岐点を下げて、お客を幅広く集めて店頭売り上げを増やしていく。こういうマーチャンダイジングをやっていかないと、百貨店のビジネスモデルはダメになるだろう。

百貨店の商品「ボリュームプライス」と言ってみても、一般の客から見たらボリュームではない。やはり高い。ビジネススーツも、初めて着る客の7割はロードサイドのお店で買っているのが現状だ。スーツの価格帯も下がっており、社会全体がカジュアルな服装を好むようになっている。社会環境が変わり、需要も減っている。それなのに、百貨店は同じようなマーチャンダイジングをやっている。そんな状態で顧客に「買って」と言っても通用しない。

だからこそ、百貨店も価格帯を下げるなど提案をしていかなければならない。その方法論としては、他企業と商品を開発する、あるいはある分野の商品が得意なチェーン店と組んで導入する。また、家電やスポーツギアなど、これまで百貨店が切り捨ててきたものも拾っていく。5年後の新本店の営業面積10万平方メートルという規模を生かして、再度百貨店を編集し直す。より多くの集客を図らないと、ファッション性や高質と従来路線だけではやっていけない。

「モノ」から「コト」を売る商売で百貨店の存在価値向上

--「モノ」だけではなく、「モノとコトの連動」を社長就任時から主張しているが、具体的にはどうやっていくのか。

モノばかり追いかけて「安いですよ」といっても、それでは量販と同じ。だから、お客自身が体験、体感した“コト”を絡めた形で売っていくような仕組みをつくろうとしている。厳しい状況だが、その仕組み作りのための投資は惜しまずやっていく。そうしないと百貨店の存在価値がなくなるからだ。

たとえば、新館アンドは好調だ。阿倍野本店、「フープ(Hoop)」からアンドと近鉄阿部野橋駅からの客の流れが続くようになり、集客もよくなった。「アンド」にはカルチャーセンターや旅行センターなども入居、そこで使うような材料や生活に必要な雑貨をリーズナブルな価格で売るようなテナントも入れた。カルチャーと日常生活を応援するような商品構成にしたことで、幅広いお客が来てくれており、結果、目標よりも安定的な収入が得られている。 

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