『司法改革の時代』を書いた但木敬一氏(弁護士、前検事総長)に聞く

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 3日で終わるようなことはない。死刑求刑する事件は日本で年間で20件程度。2500件ぐらいが裁判員対象事件になるから、検事が死刑を求刑するのは1%にも満たない。ただ、これに当たる人はいる。大変だが、3日で終わる必要はまったくなく、意見が一致するまで何度でも評議したらいい。

みなで納得してそうだなと思ったときには心の負担はさほどはない。そうでなく、多数決で決めたときは心の重荷は大きい。どうしても多数決せざるをえないとしても、意見が一致するまで評議したらいい。一致しなかったら死刑はない、そのぐらいのつもりで、評議すべきだ。

--民主党は裁判員制度に乗り気ではありません。

民主党の考え方は分裂ぎみだ。代表、前代表はあまり乗り気でない。だが、法務をわかっている人たちは推進派だ。また弁護士に加え、検察や裁判官のOBも腹の底から賛成かというとそうでもない。自分たちの仕事に誇りと実績を持っているからだろう。でも、プロにすべて任せろという時代は終わった。この点は、次代を担う若い人は特にわかってくれている。

裁判員制度は革命的なものだ。司法でも「お上社会」がひっくり返ることになる。理解を得るために、ありとあらゆるところで語りかけたい。制度を作る中で深く関与し、後輩たちに「荷物」を預けたのだから、自分でできることはいくらでもやらなければいけないと思っている。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済)

ただき・けいいち
1943年埼玉県生まれ。東京大学法学部卒。66年司法試験に合格し、東京地方検察庁検事を振り出しに現場を経験した後、法務省にて大臣官房長、事務次官などを歴任。2004年東京高等検察庁検事長、06年検事総長。08年定年(65歳)退官し、現職。大和証券グループ本社社外取締役など兼務。


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