JR北海道「再生」のために必要な施策とは何か 3月の新幹線開業後も経営課題は山積

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北海道において最初に時速130km運転を行った785系電車(撮影:塩塚陽介)

「JR北海道再生推進会議」は、再生に向けて安全対策等の実行に関する監視や助言、将来に向けた対策等の提案を任務とする。再生推進委員会は、道民の交通手段確保を前提にしつつ、バスや航空等の輸送機関、国道や高速道路等交通基盤の状況も勘案し、効果的・効率的な総合交通体系の一翼となるよう努めるべき-と提言した。

また、安全投資・修繕に経営資源を集中させ、現場とともに努力を傾注しなくてはならない-とし、そのためには総花的な施策と決別し、経営資源を配分できない分野は見直し、「選択と集中」に基づき事業運営を行う経営判断を求めている。社員には鉄路を守る誇りを求め、コンプライアンス意識の向上を促している。

ベテランほど列車を止めることに躊躇

2015年8月には、安全の本質をシンプルにまとめた「JR北海道安全の再生」を策定し、これを行動基準、判断基準の中心に据えた。

そこでは、安全は努力し知恵を絞らなければ実現できないこと、安全とは命を守ることという基本認識に立ち、安全を最優先する業務の進め方として基準のルールをPDCAサイクルの繰り返しで定着させること、絶対の安全基準を維持すること、ミスを前提にバックアップを図り事故を防ぐこと-とある。そして、その具体的な行動基準として「安全第一、安定第二」の言葉を掲げ、危ないと感じたときは直ちに列車を止めることを明記している。

実際のところ、定時運行に重きを置いて教育を受けてきたベテランほど列車を停止させることに躊躇する傾向があり、また、指導する側にも列車の遅延に対して個人の責を問う風潮があった。だが、会社としてそれを改め、異常を感じて列車を止めた責任は会社が負う方針を明確にしたのである。

一方、社員の意思統一というソフトの面での取り組みに対して、同じく2015年3月には、2014~18年度にかけて合計2,600億円を投じる「安全投資と修繕に関する5年間の計画」というハード面における具体的取り組みを発表した。

まずはその方針として、従来は発生主義に陥ってしまっていた設備や車両の老朽化対策について予防保全の考えに改め、車両更新もライフサイクルを基準に計画的に実施する。これまで先送りにされていた施策等は棚卸しし、現場からの声や緊急性を踏まえて設備投資や修繕を行う。予算についても対前年主義が指摘されたため、これを改めて施設規模等を勘案した考え方とする。

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