B-CAS存続の行方、地デジ視聴独占に強まる批判

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 確かにB-CAS社は08年3月期まで6期連続経常黒字を計上しているが、09年3月期はカード発行枚数が伸びたにもかかわらず売上高横ばい、経常利益は9000万円の赤字に転落している。これは放送事業者からの利用料引き下げに応じた一方で、カード調達価格の低減などを徹底できず、収支均衡計画が達成できなかったためと説明する。

そもそもB-CAS社は、有料放送の受信制限を行う目的で設立された企業。取引先の大半が株主企業で、業績なども最近まで非開示だった。この閉鎖的な民間企業に、地デジという公共性の高い無料放送波の著作権保護の役割が与えられたのは04年。テレビ番組の違法DVD対策として、放送事業者と機器メーカー、総務省の3者の合意に基づき暫定的措置として始まったが、B-CAS社や制度全体に法的根拠はない。

得するのはNHK? 受信契約促進に一役

ではB-CAS体制で最も利益を享受するのは誰か。最も多くの人員を転籍させているNHKだという声がデジコン委の周辺者から漏れ聞こえる。

B-CAS社はカード所有者に任意で個人情報の登録を求めているが、この情報は放送事業者に開示され、受信契約の案内などに役立てられる。中でもNHKは登録しない視聴者に対し、受信契約を促す趣旨のメッセージを画面の4分の1ほどの大きさで表示している。

受信契約拡大の一助であるB-CASの見直しについてNHKは、「カードは著作権保護だけに利用しており、新方式導入でも保護の効果にしか影響はない」(広報部)としている。

社会インフラである放送に、民間企業発行のカード1枚が受信制限をかけるという不透明さを指摘する声は、11年度の完全移行を前にますます高まりつつある。議論の動向には厳しい目線が集まりそうだ。

(杉本りうこ 撮影:吉野純治、尾形文繁 =週刊東洋経済)

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