世界経済の火種再び? 米・中の経済不均衡--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 しかし、アジア諸国の政府は重商主義的な政策を放棄する覚悟はできているのだろうか。日本を除けば、アジアの政策当局は為替相場の上昇を受け入れそうには見えない。

この10年間、私を含む少数のエコノミストが、深刻な金融危機が発生する確率を低下させるためには世界貿易と経常収支の不均衡を是正する必要があると訴えてきた。米中はこうした不均衡の発生に責任があるだけでなく、両国の関係こそが問題の核心なのである。

危機が起こる前にIMF(国際通貨基金)の斡旋で高官レベルの会議を含む話し合いの機会が何度も設けられてきたが、実際に取られた行動は最小限にとどまった。今や、リスクは世界全体に波及している。今回こそ、単に話し合い以上のことが行われることを期待したいものである。

もし米中の政策当局が危機以前の不均衡に逆戻りする誘惑に屈するようなことがあれば、次に起こる危機の根は竹の根のように地中にくまなく広がっていくだろう。それは米中だけでなく、どの国にとっても好ましいことではない。

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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