【産業天気図・証券業】ぐずついた天気続くが土砂降りは収まる。低空飛行ながら底打ち気配も

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 ただ、株価が、このまま一段と値を上げていくには力強さに欠ける。株価そのものも2~3年前の水準にはほど遠く、証券会社の収益環境が依然として厳しいことに変わりはない。「会社四季報」夏号では、上場証券12社の今10年3月期が営業損益段階(野村は税前損益段階)で赤字が続くとの予想しており、予断は許さない。

最大手の野村HDは、リーマンの部門買収により陣容を大幅に拡充したが、その分の経常的費用の増加に苦しんでいる。保有する金融資産の価格下落に伴って、新たな損失が発生する可能性もあり、10年3月期は税前損益で3000億円の赤字を予想した。大和証券グループ本社<8601>は、三洋電機の優先株売却益が940億円近く発生する見込みで、10年3月期は1550億円の黒字を予想した。

昨年、野村HDがリーマンの部門買収に踏み切ったが、国内証券界では大型再編が続く。今年に入り、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306>と米モルガン・スタンレーが、MUFG傘下の三菱UFJ証券(非上場)と、モルガン・スタンレー日本法人を来年6月をメドに統合する方針を決定。みずほフィナンシャルグループ<8411>では、当初08年1月に予定していた傘下のみずほ証券(旧)と新光証券が今年5月にようやく合併を完了。旧新光を存続会社として、新しいみずほ証券<8607>が誕生した。

そして、今年2月から進んでいた米シティグループ傘下の日興コーディアル証券の争奪戦は、三井住友フィナンシャルグループ<8316>(SMFG)が勝利を収めた。SMFGは、日興コーディアル証券と日興シティグループ証券の大半の事業を今年10月に買収することで、シティと基本合意した。

今後の注目は、SMFGと法人証券で合弁会社「大和証券SMBC」を運営する大和証券グループ本社の出方だ。大和の鈴木茂晴社長は「法人部門が重なるなら、互いによくなるようにやっていきたい」と、法人部門の統合に前向きな姿勢を示している。個人営業部門の大和証券を含めた全面統合については、「現時点でない」と否定しているが、大連合に発展する可能性も、ゼロではない。

今年は銀行業と証券業の規制上の隔壁(ファイアウォール)が緩和され、顧客情報の共有や役職員の兼務などが可能となる。メガバンクを中心に銀行がますます証券界に攻め入る構図が鮮明となっていきそうだ。

(武政 秀明)

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