フランスの幼稚園は、日本とはまったく違う 「小1プロブレム」を自然と防ぐ仕組みを実感

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年長組では、アルファベットの筆記体を習う。単語が一つずつ書かれたカードを並べかえ、文章を作る練習をしたりもする。通知表の項目には、「決まりを守れる」とか、「集中して人の話を聞くことができる」などが記載されていた。「自分の席に座っていられる」という項目もある。年長組の間に、子どもたちは小学校へ入学する心構えができていく。

幼稚園でしっかり小学校への準備教育をしてくれるとなれば、親は安心だ。両親とも働いていることが前提なので、保護者会は平日の夕方から開かれる。日本の幼稚園と比べると格段に少ないが、行事もある。行事が少ないから幼稚園からのお便りも少なく、辞書を引いて解読しなくてはならない外国人の親にはありがたかった。行事での親の負担は少なく、親が参加する行事はすべて土曜日に開かれていた。

たとえば、3月の土曜日にあった仮装行列では、子どもたちはワニやライオンに扮して、太鼓に先導されて幼稚園の周囲を練り歩いた。材料はすべて幼稚園で用意され、子どもたちが紙や布に絵を描いて自分のお面や衣装を手作りした。

親の関与は、当日の仮装の支度を手伝ったり、行列の付き添いをしたりするためのボランティアだけだった。

親の手間がかかるのは誕生日会ぐらい

唯一、日本に比べて手間がかかると思ったのは、誕生日会。子どもの幼稚園では月ごとに、その月に生まれた子どもの誕生日会を開いてくれた。ケーキや飲み物は親が差し入れる。フランスの子どもが大好きな、ガトーショコラを手作りして持参する親が多いと聞いた。お菓子作りが不得手な私も、料理本を見ながらガトーショコラ作りを練習した。誕生日会当日には、どうにかケーキを届けることができた。

フランスの幼稚園には、ほぼ全員が通うことから、支援が必要な家庭を把握することが早い段階から可能になる。公立大学は授業料が無料なので、幼稚園から大学まで全部公立に通えば、教育費の負担は少ない。日本でも、子どもは社会で面倒をみるという考え方にかえ、もっと安心して子育てできる環境を整えられないだろうか。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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