【産業天気図・ガラス/土石製品】建設用や自動車用ガラスが氷結状態、液晶用が後半回復でもガラスは「雨」続く、セメントは景気対策期待で前半「雨」、後半「曇り」

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予想天気
  09年4月~9月   09年10月~10年3月

ガラス業界の2009年度前半から09年度後半は、世界規模で建設件数および自動車生産台数の底ばい状況が続き、板ガラス(建設用ガラス、自動車用ガラス)の需要停滞が続行する。液晶用ガラスは、期末に向けて回復する見込みだが、ここ数年続いた力強さには到底及ばない。業界見通しは前回(3月時点)予想の「雨」を継続する。セメント業界は、主力の国内向け販売が、企業の設備投資減少、住宅着工件数の不振から振るわない。ただ下期に政府の景気対策による公共投資によるテコ入れが望める。燃料の石炭価格下落とセメント製品値上げなどにより、下期を中心に業績は若干回復する。ただ利益水準は低次元にとどまる。前半「雨」、後半「曇り」の前回予想を据え置く。
 
 板ガラスは原燃料価格の高騰が一服するものの、建築用ガラス、自動車用ガラスとも需要回復の兆しがない。国内主力で2期連続ガラス事業が赤字だったセントラル硝子<4044>は、5月にフロート窯、6月に型板窯を休止するなど約30億円の合理化効果を見込む。それでも事業赤字は続く見込み。会社全体としては収益柱の化成品事業が横ばいのため、ガラス事業の合理化分のみ、営業利益を押し上げるだけにとどまる。

旭硝子<5201>、日本板硝子<5202>も、建築用や自動車用ガラスの極度の不振で、大幅な減収となる。旭硝子の今期(12月決算)売上高予想は前期比23.8%減、日本板硝子は、同21.6%減だ。前09年3月期に経常赤字に転落した日本板硝子は
、今期さらに300億円の営業赤字に陥る見通し。原燃料価格の下落や前期費用計上のリストラクチャリング効果は未だ及ばない一方、06年に買収した英ピルキントン社のれん償却が重荷になる。日本板硝子は、7月払い込みで日本政策投資銀行、三井住友銀行などが組成する投資ファンド向けに300億円の優先株を発行する。有利子負債を増やさずに当面の資金繰りにメドをつけた。また、09年度末までに実施する全世界グループ社員削減数を6700人と、従来よりも900人増やした。

利益牽引役だった液晶用ガラスが失速した旭硝子は、09年12月期の営業利益予想は300億円(前期比80.5%減)。600億円のリストラ費用計上により、420億円の最終赤字に転落する見通し。ただ、板ガラスに比べて液晶用ガラスは比較的回復度合いが早いようだ。液晶テレビの主要市場である欧州、米国での販売減が一服することや中国のテレビ市場の成長が期待できるからで、旭硝子が大幅減ながらも何とか営業黒字を確保するのは、そのためだ。ディスプレーガラス専業の日本電気硝子<5214>は、10年3月期予想を発表していないが、「東洋経済オンライン」の独自予想で営業利益400億円(同47.7%減)の見込みだ。

セメント業界は、国内セメント需要が08年度を下回り、1970年代の水準にまで戻るため販売数量の減少は避けられない。ただ、前期に暴騰した燃料の石炭価格が急速に下落していること、セメント製品の値上げがトン当たり300~500円程度行われることなどがプラス要因となる。業界首位の太平洋セメント<5233>は、本社移転を始め、非コア事業である電子部品子会社の売却など大幅なコストカットを行うことを加えて、低水ジョンながら営業益反発に持ちこむ。また、政府の景気対策が大規模になれば公共投資が膨らむ可能性もあり、下期から販売数量減に歯止めが掛かる可能性もある。国内事業比率の高い住友大阪セメント<5232>は、その好影響を受けそうだ。

(鶴見 昌憲)

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