一青妙さんがみた「台南地震」被害の現実 被害は「面」ではなく「点」で起きていた

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祀典武廟横の椪糖を作っていたお店

現場で感じたのは、被害者への支援の気持ちは台南にも十分に届いているということだ。そのため、物資や義援金を送ることの初期の目的はすでに達成したと考えている。これからは「次のステップ」、すなわち日本人が台南を訪れ、台南を楽しみ、台南の人たちが思っている「台湾は地震後も変わっていない」という気持ちに応えることが、今後の最大で最良の支援になるのではないかと思う。

台南は「台湾の京都」、日本人にも親近感

林百貨店前の観光客

歴史から見て、台南は台湾でも最も早くから開けた場所であり、多くの旧跡もある。同時に、人口188万人の大都市が持つ現代的な街並みが共存して、「台湾の京都」とも言われる場所だ。林百貨店や料亭の鶯料理など、日本統治時代の建物を多く含む史蹟保存に賴市長が熱心であることもあり、日本人にとって台湾でも最も興味が湧く場所だと思う。

関西国際空港からは台南まで週2本の直行便も開設された。台北駅から新幹線(高速鉄道)に乗り約2時間の台南だ。日本人が「最も台湾らしい街」台南をこれからもたくさん訪れてくれれば、地震で失いかけている台南の人たちの自信と復興に一役買うことになると、台南市の親善大使としても、またわたし個人としても期待している。

一青 妙 エッセイスト・女優

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ひとと たえ / Tae Hitoto

エッセイスト・女優・歯科医。台湾屈指の名家「顔家」の長男だった父と日本人の母との間に生まれ、幼少期は台湾で過ごし、11歳から日本で暮らし始める。台南市親善大使などに任命され、家族や台湾をテーマにエッセイを執筆し、著書に『私の箱子』『ママ、ごはんまだ?』(ともに講談社)『わたしの台南』(新潮社)などがある。原作を元にした日台合作映画「ママ、ごはんまだ?」のDVDが発売中。また、サイクリングを通じての日台交流に力を入れ、四国一周サイクリングPR大使もつとめる。最新作は自らの環島体験をもとに書いた『「環島」ぐるっと台湾一周の旅」』(東洋経済新報社)。

 

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