一青妙さんがみた「台南地震」被害の現実 被害は「面」ではなく「点」で起きていた

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支援物資の集積場所(撮影:梁炳清)

一方で、郭議員が話す通り、現場では物資や人手は十分に集まっていた。延長ケーブルやマスク、手袋、電池といった現場でしばしば必要になる細かな必需品は、不足するたびに台南市政府から通達が出され、その情報を台南市民が拡散すれば、すぐに集まっていた。

現場を離れ、台南中心部に向かった。市内の観光スポットに被害が出ていないか心配だった。古い建物の中には小さな亀裂が入っていた所があったものの、観光客がよく足を向ける台南孔子廟や、17世紀にオランダ人が築城した赤崁楼(せきかんろう、紅毛楼)、日本統治時代に開業、最近修復されて営業を始めた「林百貨店」などのランドマーク的建物は被害がほとんどなかった。入場規制もなく、普段と変わりのない台南の姿が見られた。

ただ、観光地のお店の人に聞いてみると、「旧正月休みにはいつもの倍以上の人が押し寄せてごった返しているのに、今年は普段の休日程度の人出しかない」。知り合いの民宿経営者にも聞いてみたら、「台南旅行を計画していた国内(台湾)旅行者から次々とキャンセルが入り、また3月以降に台南旅行を計画していた海外観光客からも安全確認の問い合わせが多くなっている」ということだった。

物資、調査団を派遣した日本に感謝

台南の人たちが最も心配していたのは、昨年に発生したデング熱に関する風評で観光客が激減、ようやく上向き始めたところに今回の地震に襲われ、せっかく元に戻り始めた観光客数がまた減ってしまうのではないか、ということだった。

東日本大震災直後、200億円以上の義援金を寄せてくれた台湾に対し、日本でも支援活動が一気に広がっていることは、台南でもきちんと知られていた。郭議員は「発生直後、いの一番に物資を送ってくれて、また日本政府は調査団も派遣してくれたことに感激した」と言う。さらに、「日本の人たちが街頭募金や個人募金などに取り組んでくれていることを台南の私たちはよく知っており、本当にありがたい。涙が出るほどうれしい」と感謝していた。同時に、支援に関しては台湾内でも多くの企業や個人が多額の義援金を申し出ており、逆に被害損失を上回って余剰金が出かねないことも心配していた。

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