英国の名門新聞が、ついにネットに殺された 「インディペンデント」が電子版オンリーに

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バーバー氏によれば、インディーは「英国で最も革新的な新聞であり、英語圏で最良の新聞の1つだ」という。創刊は1986年。英国のほかの主要全国紙(テレグラフ、タイムズ、ガーディアン)がいずれも100年以上の歴史を持つ中、最も若い新聞だ。

1980年代半ばまでの英新聞界は停滞状況にあった。労使の対立が長年続き、労組員によるストで新聞の発行がストップしてしまうことが珍しくなかったからだ。

1986年1月末、「ワッピング革命」が始まる。大衆紙サンや高級紙タイムズなどの経営者ルパート・マードック氏が大手労組に加盟していない印刷技術者やジャーナリストらを使って、ロンドン東部ワッピングで最新の印刷技術による制作を開始したのである。これがきっかけとなって労組問題が次第に解決され、新聞界は生まれ変わった。

そんな1986年の秋に、新聞界の新たな息吹を背景に、テレグラフ紙にいた3人のジャーナリストが立ち上げたのがインディーだった。英国では20世紀に創刊された、初の全国紙だ。

古い新聞とは徹底して差別化

「私たちは独立している(=「インディペンデント」だ)。あなたは?」というキャッチコピーの下に、どの政党や大企業からも独立した、自由なジャーナリズムを実践した。1面に斬新な構図の写真を掲載したのもインディーが初といわれる。政府高官から特別な情報をもらう特権を持つ「ロビー記者」制度に加わることを拒否した新聞でもあった。お決まりとなっていた王室報道をしないと宣言して、他紙との違いを見せた。

1989年、凝った写真と調査報道が功を奏し、発行部数は40万部を超えた(欧州では高級紙は数十万規模の部数が普通)。左派系ガーディアンから読者を奪った格好となった。

しかし、経営の不安定さと潤沢な資金を持つマードック陣営のタイムズが安値競争で攻勢をかけたことで、部数は一気に下落してしまった。

インディーが次の「初」で注目を集めたのは2003年。当時の部数は20万部前後だ。小型タブロイド判の無料朝刊紙「メトロ」が人気を博していることに気づき、インディーもタブロイド判として生まれ変わった。

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