次期大統領候補の発言に見る対中・外交政策

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--共和党--

【4】ジョン・マケイン候補

続いて共和党の大統領候補です。『フォーリンアフェアーズ』(11・12月号)には、マケイン候補の以下のような対日姿勢が示されています。

・ アジアにおいて民主主義は進展しており、その点での日本の国際的リーダーシップは歓迎すべきもので、日本は国連安保理常任理事国入りを認められるべき
・ 将来の対北朝鮮協議に関して、北朝鮮の兵器開発等と合わせて日本人拉致問題を考慮しなければならない

これだけ読むと、わが国にとって“ありがたい”候補者にも見えますが、マケイン候補の実際の外交戦略はこれまでの米国の孤立主義路線をより強める傾向にあり、その問題点も気になります。

外交政策については、http://www.johnmccain.com/Informing/Issues/を見ると、民主党候補との違いが明確です。特にイラク問題については「勝利を収めなければならない」とイラクの基地強化や兵力増強についての意見を述べています。

http://www.johnmccain.com/Informing/Issues/054184f4-6b51-40dd-8964-54fcf66a1e68.htmでは、ロシアと中国を「可能性ある戦略的な競争相手」としていますが、実際には中国に批判的な発言もしており、日本やアジア諸国との関係強化によって台頭する中国に対応するという姿勢のようです。(余談ですがマケイン候補は熱心なボクシングファンで、私と趣味が一緒です)


【5】ルドルフ・ジュリアーニ候補
元ニューヨーク市長であるジュリアーニ候補は、自身のサイトhttp://www.joinrudy2008.com/issues/では、あまり外交関係に触れていません。イラク問題を重要問題と位置づけながらも、アメリカ兵の撤退に言及しているだけです。一方で、財政や税制などに焦点を当てた政策を提言しており、この点が他の候補との違いを感じさせます。

『フォーリンアフェアーズ』(9・10月号)には、

・ 日米同盟は「アジア安定の要石」といえるほど重要である
・ 中国との関係は「複雑」であり、米国は中国の人権侵害に口を閉ざすべきではない

といった同候補の外交姿勢が記載されています。ちなみにジュリアーニ候補は、6年前、ニューヨーク市長時代に台湾の陳水扁総統と会見しています。


【6】ミット・ロムニー候補
最後に私がダークホースと思っているのが、ロムニー候補(前マサチューセッツ州知事)です。『フォーリンアフェアーズ』(7・8月号)では、日本を含むアジア地域に関する直接的な言及は少なく、「中国の経済的台頭は米国に新たな挑戦をもたらしている」などの主張に限られます。

http://www.mittromney.com/Issues/indexを見ると、ロムニー候補はマサチューセッツ州の財政改善と産業振興で実績を上げただけあって、経済産業政策を強調しているように見えます。ちなみに同サイトはデザインも良く、「Strategy for a Stronger America」というキャッチフレーズの下にロムニー候補の考えが整理されています。



以上、英語のサイトを読みながら各候補者の違いを書きました。各候補のサイトは動画も多く、情報も充実しています。アメリカ大統領選の行方を見極める上で、一度参考にしてみてはいかがでしょうか。


藤末健三●ふじすえ けんぞう
民主党参議院議員。1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。

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