産油国バブル崩壊は通貨危機の連鎖に繋がる アジア通貨危機を超える危機になる可能性

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サウジアラビアだけでなく、アルジェリア、ナイジェリア、イラク、クウェート、UAE、ベネズエラ、メキシコなどの企業に先進国の金融機関が融資している。企業の格付けが下がり、おカネの調達ができなくなれば、経済は回らなくなる。2011年にチュニジアに始まり「アラブの春」が中東各国に飛び火し、独裁政権が倒れたものの、民主化はうまくいかなくて混乱している。

サウジアラビア・リヤルはドルにペッグしているが維持できなくなるだろう。税金を取るという話になるだけで国民からは猛反発が出るだろうが、ペッグを外さざるをえなくなると、輸入インフレが起きる。これにより、国民生活は疲弊するという悪循環が起きる。

サウジのみならず、産油国・資源国の多くはドルにペッグしており、その維持がいつかは難しくなる。日本銀行のマイナス金利同様に、ペッグ制の放棄はいきなり発表されるので、金融市場には大きなリスクだ。香港ドルについてもペッグ制の放棄の話が取り沙汰されている。すでに、昨年、アゼルバイジャンやカザフスタンなどのCIS(旧ソビエト連邦に属していた国で構成する独立国家共同体)諸国がペッグ制からはずれた。アゼルバイジャンは財政が悪化してIMF(国際通貨基金)や世銀と40億ドルの緊急融資枠の交渉をしている。

リスクはアジア通貨危機を超える危機

最悪のシナリオはドミノ現象が起きることだ。アジア通貨危機のときも、ペッグ制から次々に離脱。危機は、タイ、インドネシア、マレーシアへと飛び火し、最後に韓国がIMF管理下にはいった。産油国・資源国バブルの崩壊は、もっと影響の及ぶ範囲が広く、この数倍のインパクトがあるのではないか。

中東の国々、ブラジル、ベネズエラなどの南米の国々、アゼルバイジャン、トルクメニスタンなどの中央アジアの国々、ナイジェリア、アルジェリア、アンゴラなどのアフリカの国々。こうしたモノカルチャーの油や資源に頼る国々が過去10年間に贅沢生活から転落していく。

そうした結果、アラブの春のような形で国の体制が崩壊していくかもしれない。地政学のリスクが絡み合ってくるとイスラム国の存在があるので、怖い。サウジアラビアにはISに対する信奉者も多いと聞く。オサマビンラディンもそうだったが、不満を持つ若者が過激な思想に走りやすい。

結局、リーマンショック以降、世界経済を牽引してきた国々の経済が悪化している。「中国爆食」といわれた2003年頃から高成長のインド、ブラジル、南アフリカ、ロシアを加えて、"BRICS"への投資をゴールドマンサックスが推奨したが、いまや次々に脱落して、インドだけが残った。「BRICSは消えてI(愛)だけが残った」という洒落にならない状況だ。

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