【産業天気図・ソフト・サービス】IT投資抑制が直撃。システムの外注費用削減でも09年度は雨模様続く

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

ソフト・サービス業界は09年度前半、後半ともに「雨」模様が続く見通しだ。ここ数年の好調を牽引してきた、銀行などの大型再編によるシステム更新が終了。さらに、昨年9月の金融危機以降、コスト削減のためIT投資の先送りや、規模を縮小する企業が続出している。下支えとなる官公庁需要も競争激化で利益への貢献は薄くなる一方となっている。

受注激減に見舞われるソフト・サービス業界では「昨年までのシステムエンジニア不足が嘘のよう」という悲鳴が各社から聞こえる。受注減に加え、顧客からの値下げ圧力が高まる中で、各社とも下請け会社の社数絞り込みを急ぐ。こうすることで、1社辺りの仕事量を増やしながら単価を下げることが可能と見る。

大手のNTTデータ<9613>、富士通<6702>やNEC<6701>も例外ではなく、外注を減少し内製化を進めることで利益を確保する方針だ。そのあおりを受け、ITバブル時にエンジニアの独立で急増した下請けのソフト会社は、現在淘汰の危機を迎えている。
 
 証券業界のIT投資抑制の影響を受ける野村総合研究所<4307>などの中堅は新規顧客開拓に活路を見出す。保険料未払い問題でITシステムの見直しを迫られ、IT投資増額を余儀なくされている保険業界などへ人材などのリソースをシフトすることで、苦境を乗り越えようと必死だ。

一方、深刻なのは中小・零細企業向けを主要顧客とする、大塚商会<4768〉やオービックビジネスコンサルタント<4733>だ。中小・零細企業の市況回復は、10年度以降になると見られ、10年度の前半まで雨模様が長引きそうだ。中小・零細企業のIT化促進の起爆剤になると期待されている、ソフトなどをネットでダウンロードして利用する「SaaS(サース)」型サービスも今年度は望み薄。ベンダー側の投資コストが大きいなどの問題を抱えるため、本格的なビジネス展開は数年先とみられるためだ。

各社とも企業のIT投資の7割ともいわれる既存システムの保守サービスが業績の下支えとなり、赤字転落まで落ち込むというほどの厳しさではないが、09年度が忍耐力が試されることは間違いない。今後は15年に日本でも導入が検討されている国際会計基準導入に伴うシステム移行や、不況による業界再編に伴うシステム更新需要などが、業界回復のカギを握ることとなりそうだ。

(麻田 真衣)

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