中学受験の不合格をどう受け止めたらいいか 「子どもの出来は親次第」という幻想

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教育虐待とは、「あなたのため」という大義名分のもとに親が子に行ういき過ぎた「しつけ」や「教育」である。教育虐待の実態については拙著『追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉』(毎日新聞出版)に詳しい。

結局のところ、親は実は無力である

「子どもの出来は親次第」という幻想があるから、親は、自分の親としての実力を証明するために、子どもの学力や学歴を欲するようになる。頭ではそんなことは考えていないと思っていても、ほとんど無意識のうちに、それを望むようになってしまう。

子どもが育つうえで、もちろん親の影響力は絶大だ。しかし、あえて言いたい。結局のところ、親は実は無力であると。受験はそのことを思い知るいい機会になる。

親になると、子どものためにあれもしてあげよう、これもしてあげようという気持ちに駆られる。しかし、あれこれしたことが、そのまま親の期待通りの成果をもたらすとは限らない。むしろそうならないことのほうが圧倒的に多いだろう。親の意図とはほとんど関係のないところで、子どもは育っていくのである。

あるいは「あのとき自分があんなことを言わなければ、自分があんな判断をしなければ、子どもはもっとのびのびと勉強して、もっと実力を発揮できたかもしれない」と思う親もあるかもしれない。ただ、そのようなことはどこの家庭でも多かれ少なかれ経験する。それが結果を決定づけたわけではない。子どもはそんなに弱くない。

「あなたは私がいないと何もできない」

子どもは親の思ったとおりには育たないが、それなりのものには必ず育つ。親がよほど余計なことをしなければ。私はそう思う。

「わが子のために」とあれこれ考えるのは親の性。それは私も否定しない。しかしだからといって、子どもが期待通りの結果を返してくれることを期待するのは親のエゴである。子どもは親のために生きているわけではない。子どもは親の望む人生を生きるのではない。子どもが自分の力で自分の人生を切り開いてこそ、生きている実感を味わえる。親ができることは、子どもを励まし、見守ることだけだ。

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