【産業天気図・家電・AV】長引く消費不況で雨から曇り、コスト改革と新市場開拓がカギ

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 今期の最大の課題は足元の収益力回復もさることながら、先進国の消費不況が長期化するという前提で、中期的な再成長の種まきをいかにするかという点だろう。明確な方向性を示したのはパナソニック。大坪文雄社長は新興国市場での販売拡大、低価格品シフトに合わせた開発・生産改革を今期のテーマとしている。たとえば薄型テレビでは前期比1.5倍の1550万台を販売する計画だが、牽引役はブラウン管テレビからの置き換え需要がある中南米や中国だ。新興市場に適した機能と価格の製品を生むために、現地周辺に開発から生産までの拠点を再配置する戦略のようだ。シャープの液晶パネルの中国合弁も、同様の狙いに基づいている。

両社と異なるのはソニー。テレビなど主軸事業では低価格帯を狙わず、高付加価値製品を足場とする方針。この戦略の試金石となるのは、今秋に日米欧で発売される新型ゲーム機「PSP go」の事業展開。この製品はソフト記録媒体・UMDを廃しており、インターネットでソフトをダウンロードする仕組みだ。ハワード・ストリンガー会長が就任以来掲げてきた、ネットワーク融合型事業の最新例といえる。新PSPで従来のゲームユーザー以外も巻きこめる新しいビジネスをどう描けるかがひとつの焦点だ。

また大手3社以外の、パイオニア<6773>やJVC・ケンウッド・ホールディングス<6632>といった中堅メーカーについては、社債償還や財務制限条項の抵触回避をめぐったファイナンスイベントが注目点になりそうだ。

(杉本 りうこ)

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