「育児社員への配慮やめます」、資生堂の意図 子育て中の美容部員を優遇するのは不公平か

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資生堂の本多由紀・人事部長は「育児期の社員でも会社の戦力となってもらう」と強調した

改革断行の第一人者である本多由紀・人事部長は、1月に朝日新聞社が主催したフォーラムに登壇。「育児期の社員でもキャリアアップし、会社の戦力となってもらうという(女性活躍支援の)最終段階に進んだ」と強調した。

配慮撤廃という方針転換に反発も大きかったのでは、と思いきや、意外にも「社内はこれまででいちばん落ち着いた状態」(本多氏)。月に1回だけ遅番シフトに入る社員、残業免除のフルタイムに戻した社員などさまざまだが、98%が従来の働き方を改めたという。

資生堂に続く企業も

「ゼロか100かの両極端でなく、『今日はやれるが毎日は難しい』という、ケースバイケースの対応を可能にした今回の改革は、自然な流れだ」と女性活用ジャーナリストの中野円佳氏は評価する。

小売りの現場では資生堂に続く動きもある。三越伊勢丹ホールディングスは2014年から、時短勤務でも必要があるときは、1日単位でフルタイム勤務に戻せる制度を開始。日本ロレアルでは2015年から優秀な美容部員向けには、むしろ夕方・土日に勤務することを条件とする、週2回勤務制度をスタートした。

模索する企業。「出生率1.8」と女性就労率向上をアベノミクスは推進し、仕事と育児の両立制度が整備されてきたのも事実だ。が、それが職場の女性を二分し、育児中の社員を戦力化できないなど、新たに生じた悩みも多い。小手先の制度導入ではなく、どこまで個別の事情によった働き方にできるか。資生堂ショックは図らずもそれを世に問うこととなった。

「週刊東洋経済」2016年2月20日号<15日発売>「核心リポート04」を転載)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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