【産業天気図・放送・広告】企業業績の不振が続き、広告出稿回復の兆し見えない。09年度も「雨」続く

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

放送・広告業界の2009年度前半は「雨」、後半も「雨」が続きそうだ。自動車、電機を筆頭に、大手広告主の業績不振が続いており、広告出稿量の減少に歯止めがかかっていない。依然として先が見通せない状況だ。

在京キー局の08年度決算は非常に厳しい結果となった。他社に先駆けて番組制作費等の削減に取りかかったフジ・メディア・ホールディングス<4676>やM&Aの効果や不動産が荒稼ぎするTBS<9401>は、営業利益の落ち込みが前期比10%台で踏ん張ったが、日本テレビ放送網<9404>は同47.1%減、テレビ朝日<9409>が同79.8%減、テレビ東京<9411>が同56.3%減と急落した。原因は、番組と番組の間に放送されるスポット広告収入の不調が続いていること。前期の東京地区スポット出稿額は4月から1度も前年同月比実績を上回ることなく、年間でも前期比12.4%減と2ケタの落ち込みとなった。「これほど急激な落ち込みは過去に経験がない」(テレビ局首脳)ほどの、番組制作費等の経費削減がまったく追いつかなかったのだ。

一方、電通<4324>、博報堂DYホールディングス<2433>、アサツー ディ・ケイ<9747>などの広告代理店も厳しい状況は同じ。もともと売上高に占めるテレビの割合が高いことに加え、新聞、雑誌などはテレビ以上に低迷している。前期伸びたのはインターネット広告ぐらいだが、ネット広告は単価が安く、人件費を中心とした固定費をまかなえるほどのインパクトはない。電通、博報堂DYは大幅な営業減益となるだけでなく、有価証券評価損の計上で、上場以来初の最終赤字に転落した。

09年度も明るさは見えてこない。テレビ局の4月のスポット出稿額は14%程度減少している。さらに今期の大きな落ち込み要因は特定の番組を企業がスポンサーするタイム広告だ。タイムは6カ月~1年契約が多いが、広告主が固定費化するのを嫌い、出稿を手控えている。加えて、昨年は北京五輪という超大型イベントがあったが、今期はそれに匹敵する規模のものはなく、前期よりも収入が減るのは間違いない。

それを織り込んで、放送局、広告代理店の多くが、今期も大幅な減益になるという見通しを立てている。今期の注目点は「いつ広告の落ち込みが底を打つか」だが、それは企業業績の回復次第だ。もっとも、企業の業績が回復しても、急に広告費を増やすとは考えにくい。当面は厳しい状況が続くだろう。

(中島 順一郎)

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