鉄鋼メーカー“寝耳に水”、資源メジャー合流の悪夢

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一方で、07年のアルミ大手アルキャン(カナダ)買収で巨額の負債を抱えたリオは、当座の債務圧縮に追われていた。09年2月、リオの経営陣は中国アルミと戦略的提携を結び、195億ドルの出資を取り付ける。ところが、この方針は株主の猛反発に遭った。

豪州における資源ビジネスとは国の基幹産業にほかならず、「リオへの中国資本の注入は、日本に置き換えれば、トヨタに中国が出資するようなもの」(業界関係者)。鉄鉱石の輸入国である中国が供給側であるリオに強い影響力を持つことも、株主には大きな懸念材料だったといわれる。

また、豪州では金融危機以降に鉱山の閉鎖が相次ぎ、鉱山労働者の失業が社会問題化しつつあった。メジャー同士の統合は雇用創出につながる期待もある。こうした背景から今回の合弁計画が浮上したと見る向きもある。

大型計画認可の行方

今後の焦点は、関係各国・地域の独禁当局が両社の事業統合を許可するかどうかだ。企業買収に詳しい豪州クレイトン・ユッツ法律事務所の加納寛之弁護士は、「前回は審査事項も広範にわたったが、今回の合弁は一地域の鉄鉱石の生産協力で、審査範囲が限定的。豪州の独禁当局が承認する可能性は高い」と分析する。

一段の寡占化が懸念される鉱山側に対し、日本の鉄鋼業界は国内シェアを基準とする独禁法の縛りもあり、最大手の新日鉄でさえ粗鋼生産の世界シェアは3%弱。価格交渉力という点では分が悪い。「世界シェアの観点から今回の合弁が承認されるのなら、われわれ(国内鉄鋼大手)もとっくにくっついている」(別の鉄鋼幹部)と恨み節も漏れる。

資源メジャーの圧倒的シェアを背景に原料価格交渉を押し切られると、自動車や電機など主要な製造業の資材高を招きかねない。各国の独禁当局の判断は、鉄鋼のみならず、産業界全体にとっても他人事ではない。

(猪澤顕明 =週刊東洋経済)

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