デキる就活生は「海外留学」をどう生かすのか 人事担当者は留学生のここを評価している!

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こうした現象は、珍しいことではなく、実は多くの留学生が経験している。言葉も文化も違う環境に慣れようと必死に頑張るものの、その分精神的な疲れも出やすい。Hさんの場合、自分から英語でコミュニケーションをとるための自信を持つのに5カ月間かかったことを考えると、やはり半年程度の留学期間は欲しいところだ。

一方、「留学先」を選ぶ際に重要なのは「そこで何をしたいか」「どんな経験をしたか」に尽きるが、もう一つ重要なのは「日本人留学生が少ない」かどうか。なぜなら、留学経験者の失敗談としてよくあがるのが、「日本人同士で行動していたため、日本の生活とあまり変わらなかった」という話だからだ。せっかく意を決して留学に挑んだとしても、日本にいるときと同じ生活をしていては意味がない。今までに体験したことのない経験を得るには甘えは捨てたほうがいい。

比較的日本人が少ない留学先とは

とはいえ、コミュニケーションをうまく取ることができない、不慣れな場所では日本人の存在は心強いもの。「できる限り日本人と行動をとらない」「他国の学生と積極的に交流する」ことを意識すれば、多少日本人が多い国や地域に行ったとしても実りある経験ができるだろう。

では、就活を控える学生たちに一押しの留学都市はどこだろうか。比較的日本人留学生が少ない都市としては、たとえば英国であればケンブリッジやブリストル、マンチェスター。米国ならば、人気の高い西海岸の都市ではなく、ボストンやワシントンD.C.、マイアミがオススメだ。また、アジアであれば、中国語と英語のどちらにも触れることができるシンガポール、そして、もっとマイナーで、もっと日本人に馴染みのない国や地域であればイタリアの南部に位置する英語圏でもあるマルタというチョイスもある。

欧米では、卒業から就職(または進学、進級)するまでのすき間時間を「ギャップイヤー」と呼び、社会人と学生とのすき間時間(ギャップ)を埋めるために、海外留学やボランティアなどさまざまな取り組みに挑戦することが推奨されている。欧米の学生はこうした経験を通じて、社会人として長い目で活躍できるようなコミュニケーションスキルや忍耐力を培っている。

留学で何を得るかは、行った人次第。この先、自分がどんな社会人になりたいか、どんな人生を歩みたいかを考え、留学がその目的を実現させるのに有用な手段であれば、ぜひ挑戦してみて欲しい。

平尾 諭 EF総合教育研究所研究員

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ひらお さとし / EF総合教育研究所研究員

1983年生まれ、岐阜県出身。中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)卒業。

アマゾンジャパン、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン・グループなど外資系企業を得て、2014年、53カ国で教育事業を展開する世界最大の私立教育機関EF Education Firstの日本法人であるイー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン・グループ(EF)に入社。入社後、オンライン英会話スクール「EF English Live」のマーケティングマネージャーして「EF English Live」の国内のマーケティング戦略を担ったほか、国内のトップアスリートを対象にした英語トレーニング支援を推進。現在はEF総合教育研究所の研究員としても活動し、国内外の教育、人材開発に関する様々な調査分析業務を遂行する。

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