「高橋財政」に学び大胆なリフレ政策を--昭和恐慌以上の危機に陥らないために

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 日銀は06年3月6日に量的緩和を解除した際に、「新たな金融政策運営の枠組みの導入」を発表し、「日本の物価上昇率は海外主要国に比べて過去数十年間低く、1990年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきたため、家計や企業は低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている」として、金融政策もそれを前提に運営すると述べている。

しかし、これでは、90年代以降の長期にわたる低い物価上昇率は日本経済にとって最適な物価上昇率であり、日銀の金融政策とは無関係に実現したことになる。金融政策では「デフレを終わらせることはできない」と宣言しているに等しい。

デフレぎみの低物価上昇率は日銀の金融政策によってもたらされたものである。高い期待実質金利が日本の内需拡大を抑制する一方、過度の円高が輸出産業の収益を圧迫し、日本企業の海外流出を招いている。

「高橋財政」の誤解と真実

量的緩和はほとんど貨幣ストックの増大をもたらさなかったが、日銀が確実に貨幣ストックを増やす方法がある。それは30年代の昭和恐慌期に高橋是清蔵相が採用した国債の日銀引き受けである。

30年代の大恐慌も、その一環である昭和恐慌も、金本位制の下で起きた。だが、いずれの恐慌も基本的には金本位制からの離脱と、それによって自由になったマクロ経済政策(特に金融政策)の発動の組み合わせで脱出できたのである。その立役者が時の蔵相、高橋是清である。

「高橋財政」はその名前から公共事業の増大による財政政策であると誤解されている。しかし本質は財政政策と金融政策の合わせ技にある。貨幣ストックが一定のところで財政政策だけを行っても、やがて金利が上がってしまう。これでは民間投資が減少する。また国内金利の高騰は円建て資産の魅力を増すため外国からの資本流入が増え、為替を円高方向に動かし輸出を減らす。せっかく財政で需要を増やしても、輸出が減る分、需要が減ってしまうのである。

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