「仕事だけ人間」は部下の力を伸ばせない 「部下の人生にコミットする力」はあるか?

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たとえば全社員に「こういう資格のある人を募集します」と告知すると、男性ならその条件に6~7割該当していれば応募してくる人が多いんです。ところが女性はその条件にぴたっと合ってなければ応募しない。テーブルにつこうとしないんです。

おそらく女性には、その他の選択肢が多過ぎるのでしょう。仕事のキャリアアップと同時に、結婚、出産、育児、嫁としての立場や介護などの家庭の事情、やらなきゃいけないことがたくさんあって、仕事優先というのが難しい。旦那が手分けしてくれると思えないのでしょうな。男が家のことを女性に押しつけすぎなんですよ。

――それはたぶん、今も昔も変わりませんね。

サンドバーグ曰く、キャリアはマラソンで、沿道の観衆は男性ランナーには「がんばれ」と声援を送るが、女性には「そんなに無理するな」「もう十分、最後まで走らなくていい」「どうして走り続けるのだ、家で子どもが待っているのに」と言うんだそうです。そりゃ、辛いでしょう。

女性が活躍できる社会とは、一握りのキャリア女性だけでなく、その他大勢の「普通の女性」が男性と同じようにキャリアを積んでいける社会ですよ。

管理職の方が自分で決められる

――そのためには普通の女性でも、昇進を引き受けなさいと。

私が言い続けているのは、タイムマネージメントとかワークライフバランスを向上させたいのなら、管理職になるほうがいいということです。なぜなら、自分で決められるからです。

私は、現役バリバリのときに妻が入院してしまい、家事も育児もやらなくてはならなくなりました。残業ができなくて、定時退社を続けながらもなんとかこなせたのは課長だったからですよ。自分の事情を部下に話して、課全体で残業しなくてもいい職場を目指したのです。

もし、課長代理かもうひとつ下だったら、課長の許可を取らなければならない。みんなが残っているときに、ひとりだけ先に帰るわけですからね。

だから女性に対しては、管理職になって自分で時間をコントロールしなさいと言いたいです。与えられたチャンスを簡単に手放さないこと。何も完璧を目指す必要はないんですから。やってみれば新しい視界が開けますよ。

男性は、男女の別なく部下とコミュニケーションを取り、よく理解してあげること。特に女性には、聞く耳を持つことを忘れずに。

(構成:山田恵子、撮影:後藤利江)

佐々木 常夫 佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

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ささき つねお

1969年、東京大学経済学部卒業、同年東レ入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極め、そうした仕事にも全力で取り組む。

2001年、東レ同期トップで取締役となり、03年より東レ経営研究所社長となる。 10年、(株)佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表。

何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観をもち、現在、経営者育成のプログラムの講師などを務める。

著書に『完全版 ビッグツリー』『そうか、君は課長になったのか。』『働く君に贈る25の言葉』(以上、WAVE出版)など多数。

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