超楽観派の「裸の王様」と党内反対勢力との綱引きが焦点

超楽観派の「裸の王様」と党内反対勢力との綱引きが焦点

塩田潮

 民主党の小沢騒動で主役の座から遠ざかっていた感があった麻生首相が久しぶりに舞台に登場した。
 国会延長問題で与党の意向を覆して「55日間」を主導する形に演出した。といっても、これで総選挙の時期が自動的に確定したわけではない。東京都議選と同日の7月12日、長崎原爆の日の8月9日、衆議院議員任期満了間近の8月30日や9月6日、満了後の10月18日など、総選挙の日が取り沙汰されているが、どの日も可能性がある。

 解散問題では「私が決めさせていただく」が麻生首相の決まり文句だ。なのに、先送りの繰り返しで、「愚図」「臆病」と評判が悪い。やっても勝てそうにない、負ければクビ、やらなければ交代と言われるという八方塞がりと映るが、本音を探るには、一般論や常識論、経験則、方程式は無視して、麻生流を頭に置いて観測する必要がある。
 もともと「陽気、強気、能天気」が取り柄で「落胆、失意、憔悴」とは無縁といわれる麻生首相は、客観情勢にかかわりなく、歩みは着実、現状は順調と思い込む超楽観主義者のようだ。
 首相に必要な資質はと聞かれて「どす黒いほどの孤独に耐える力」と答えたが、逆境や不遇を想定した話ではなく、我慢していれば必ず道は開けると考えるタイプだ。

 解散・総選挙についても、延長国会の攻防、自身の人気の浮沈、選挙情勢、公明党との関係、自民党内の麻生降ろしなどの諸条件を入念に検討するといった手法ではなく、最後は自分流の勝手な解釈で決断して突っ走るのではないか。
 自分流とは、政局は麻生ペースで、自民党も公明党も結局は黙って自分に従い、選挙も言われるほど与党は弱くないという判断だ。究極の「KY」だが、安倍、福田の両首相と違って、ポッキリと折れる、プッツンと切れるというのはなさそうだから、この先は、超楽観派の「裸の王様」と、心中はまっぴらと首に鎖をかけようとする党内反対勢力との綱引きが焦点になるだろう。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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