統合実現でも晴れない新生・あおぞら銀の深い霧、収益モデルが破綻、公的資金にも壁 

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リスク資産なお高水準高金利預金にも不安感

だが、両行にとってのより本質的な問題は、こうした巨額の損失処理を行ってもなお、資産の健全性に対する不安と懸念を払拭し切れず、収益構造の再構築と将来の成長に向けたビジネスモデルを十分に描き切れていない点だろう。

決算会見で新生銀の八城社長は、「09年度を身軽にするために思い切った処理をした」と主張。一方、あおぞら銀のブライアン・プリンス社長代行も「今年度以降の収益力回復に向け、極めて優位な態勢を整備することができた」と述べ、ウミは出し切ったことを強調した。

しかし、あおぞら銀が保有する非上場の外国債券・証券は、圧縮を進めたとはいえ、今年3月末で依然1107億円、企業再生ファンドなどの組合出資金は866億円に及ぶ。与信費用膨張の一因となった不動産ノンリコースローンに至っては5560億円に達し、新生銀も6448億円の残高を抱えたままだ。

新生銀で2917億円、あおぞら銀で4520億円まで積み上がったLBO(レバレッジド・バイアウト)融資の存在も不気味。買収先の資産を担保にM&Aの資金を貸し付けるLBO融資は、通常の融資に比べ利回りが高い半面、回収不能リスクも高いとされるからだ。

新生銀の総資産はこの3月末で約12兆円、あおぞら銀は6兆円。「メガバンクなどと比べてリスク性の高い資産のウエートが大きく、収益基盤が不安定。金融市場の混乱が加速したり、不動産市況や景気の悪化が続けば、再び多額の損失計上と赤字決算を強いられかねない」。市場関係者の一人はこう指摘する。

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