中国は「暴走北朝鮮」を抑える意思も力もない 影響力のなさは過去にも証明されている

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そんな中国にとって北朝鮮の今回の行動は、当然やっかいなものだ。日米韓から中国の影響力行使に対する期待は高まり、かつ北朝鮮に対する具体的行動を求める声が高まっている。だがそれは、中国の真意を知らない者のないものねだりのようだ。というのは、中国の北朝鮮に対する立場は現在でも変わっていないためだ。

中国の立場とは何か。それは、(1)北朝鮮の行動は国連安保理決議に違反しているものであり対北経済制裁には賛成する、(2)だが、日米韓が主導するような超強硬な経済制裁は受け入れがたく、(3)朝鮮半島の非核化と安定のためには対立を煽らずに目標へ進むべきものであり、(4)そのためには2007年以降中断している6者協議を再開して北朝鮮を交渉のテーブルへ復帰させるべき、というものだ。

北朝鮮も、「中国の基本戦略は、北朝鮮の崩壊ではなく朝鮮半島の安定にあることを熟知している」(北朝鮮経済に詳しい帝京大学の李燦雨教授)ゆえに、傍若無人のような強攻策をとれる。「そのため、核実験をしたとしても2~3カ月すれば中朝関係は落ち着くと北朝鮮は見透かしている」(李教授)ようだ。

中国は「朝鮮半島三原則」を変えず

こんな中国の立場は、以前からも顕著だった。その一例が、2013年の中韓首脳会談だ。この会談で韓国の朴槿恵大統領は中国の習近平国家主席に「北朝鮮の核は不要」という文言を共同声明に盛り込むことを要求した。

しかし中国側は、従来から主張してきた「朝鮮半島三原則」(平和と安定、朝鮮半島非核化、対話と交渉による問題解決)にこだわった。結局は「6者協議の早期再開」を謳うことで合意している。

北朝鮮問題の当事者中の当事者である韓国でさえ、自国の努力よりは中国の影響力に期待していたようだ。4回目の核実験実施が可視化されつつあった2015年末、朴大統領は「北朝鮮が4回目の核実験実施に対し中国が積極的に介入すれば、北朝鮮の実質的な制裁が可能になる。結果として非核化が早まる」と明らかにした。

だが、北朝鮮は4回目の核実験を強行し、結局、中国は北朝鮮の行動を止められないことが明らかになった。核実験後に日米韓が国連安保理を舞台に経済制裁の強化をアピールしても、中国は「朝鮮半島三原則」を再度表明し、「早期の6者協議再開」という従来の提案を繰り返しているのが現実だ。

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