熱帯びるフィンテック、果実を得るのは誰か ブームに落とし穴はないのか

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政府の後押しもあり、既存の金融機関はそろって、フィンテックに前のめりだ。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3大メガバンクは15年夏ごろにフィンテックの専門部署を設置した。

特に意欲的なのが三菱東京UFJ銀行で、15年6月にフィンテックに関するアイデアを集めるビジネスコンテストを実施。今年3月からは事業提携や出資を検討するプログラムなどを始める計画だ。

「自前主義のモノ作りは限界。オープンイノベーションに舵を切らなければならない」と、三菱UFJフィナンシャル・グループのデジタルイノベーション推進部の藤井達人氏は解説する。

ブームは人為的との声も

だがこうした熱気には批判的な声もある。国内大手のベンチャーキャピタル、WiLの伊佐山元・CEOは経産省の研究会で、「半分くらいは人為的に作られたブーム。関係者はもっと冷静になったほうがいい」と警鐘を鳴らした。

理由の一つは、フィンテック企業による資金調達領域の内訳にある(図右)。14年の米国のデータでは、決済と融資で約8割を占め、特定の領域に偏っている。

実際に米国では最近上場した融資系の著名なフィンテック企業として、OnDeckやLendingClubがあるが、ともに株価は低迷している。

日本でも15年にフィンテック企業として国内最大の資金調達を行い、8月に上場したメタップスは、営業損失などが続いていることから、今年1月の決算で継続企業の前提に重要事象がついた。

あるメガバンクのフィンテック担当者は「日本の銀行は振り込みの確実さやATMの稼働率などで、欧米に比べ質が高い。フィンテックの波に出遅れているからと、焦る必要はない」とも見通す。

単なる流行で終わるのか。それとも、金融革新のうねりとなるのか。フィンテックの実力はまだ見えない。

「週刊東洋経済」2016年2月13日号<8日発売>「核心リポート02」を転載) 

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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