児童虐待、なぜ「再三の通報」が生きないのか どうすれば悲劇の連鎖を止められる?

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「今回の事件については、まず、各機関どうしの情報共有が不十分だったと言えるでしょう」

榎本弁護士は、まずこのように指摘した。

「現在、各市町村には、児童相談所職員や市町村の児童福祉などの担当員、警察職員、保健所職員等で構成される協議会があります。協議会での話し合いで、各機関が問題だと判断した案件については、情報共有などの連携がはかられるようになっています。

また、警察と児童相談所の連携についても、2006年(平成18年)に警察庁から通達(『児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした児童虐待への対応について』)が出されて以降、年々推進されてきてはいます。

たとえば、児童相談所に警察職員やそのOBを配置したり、合同研修会などを通して連携を強めることで、情報共有や共同対応をしやすい体制を整えてきました。ほかにも、情報提供の際の書式などを整備したり、児童虐待やいじめなどに関する相談を受け付けている警察の『少年サポートセンター』と児童相談所の連携も現在すすめています。

こうした連携の推進だけが理由ではありませんが、警察から児童相談所への通告の件数自体は、ここ数年で飛躍的に増加しており、一定の評価はできると思います」

悲劇が繰り返される理由とは?

では、なぜ、今回のような事態が起きるのだろう。

「要因としては、最初に通告を受けたり、認知したりした機関の情報が、すべての機関で共有されるわけではない点があります。特に、一般の方から警察へ通報がなされた場合、警察において、児童虐待が疑われると判断されたケースのみが、警察から児童相談所へ通告される実態があるからだと思われます」

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