「職場だけ夫婦別姓」で妥協する、女性の心理 ずっと事実婚だった私は、こう考えてきた

✎ 1〜 ✎ 48 ✎ 49 ✎ 50 ✎ 最新
拡大
縮小

「堂薗」は私の旧姓です。私は結婚して19年、子どもが2人いますが、仕事上はずっと旧姓を使っています。実を言うと、結婚式を挙げてから長女を出産するまでの7年間、私たち夫婦は事実婚を選択していて、入籍をしませんでした。私が結婚を機に「姓」を変えることに強い違和感があったからです。だから戸籍上、あるいは会社への申告上は独身状態でしたが、それぞれが働いていて財布も別、それぞれに税金も保険料も納めていてなんの不自由もありませんでした。

でも、夫の両親や親戚にはこのことは内緒にしていました。「結婚したら、夫婦そろってどちらかの姓を名乗るもの」と何の疑いもなく考えている夫の両親に、余計な心配や衝撃を与えたくなかったからです。もっと言うと、私の気持ちが理解されて受け入れてもらえるとも思えませんでした。

約20年前、結婚する頃の私は「夫婦別姓法案」は、じきに成立するものだろうと思っていたし、成立したらその時に考えればいいか、夫も別になんの反対もしていないしゆっくり考えよう、くらいの気分で事実婚を選択し、毎日忙しく過ごしているうちに数年が経ってしまったというのが実態です。そして、子どもを出産する段になって、事実婚の際の子どもの不利益や相続上の問題、実際の場面での不自由などを知り、「7年経っても法案は成立しなかったなぁ」と思いながら夫の姓を名乗ることを決めて入籍することにしました。あれから10年以上経った今もいまだに議論はされるものの、改正には至っていないわけなのです。

実際に事実婚、入籍を経験し、働き続けて出産や育児をする中で、入籍したことで不便なこと、よかったと思うことの両方ともあるな、というのが素直な実感です。

不便だったのは仕事をする際

不便なことの代表は、やはり仕事でした。「堂薗稚子」として仕事をしてきたので、よくも悪くも、これが仕事上の私のブランド名です。ですから、名前を変えて働くのは私にとってはまたイチから始めなくてはならない、実績もゼロクリアされてしまうというような感覚があります。

同じ会社で働き続けていれば、旧姓で働き続けても年末調整や源泉徴収など、そういった書類は戸籍上の名前で届きますし、年賀状用の名前に旧姓を併記すればいいだけの話だったりします。でも、不勉強で恥ずかしいのですが、退職して起業し、会社を登記するのに、戸籍上の名前で手続きしなければならないことを知って衝撃を受けました。特許の申請なども戸籍名でしかできないそうです。

次ページもちろん同じ姓にはメリットもある
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT