盛況「1000円高速」の波紋、国土交通省の早すぎる翻心

盛況「1000円高速」の波紋、国土交通省の早すぎる翻心

高速道路料金が上限1000円に値下げされて迎えた、今年のゴールデンウイーク。金子一義・国土交通大臣は連休後の記者会見で、「サービスエリアでも非常に物品が動いてくれたし、観光地でもキャンペーンを張ったところはにぎわったようだ。(値下げには)それなりの経済効果が出たと思う」と述べ、成果をアピールした。

一方、JRやフェリーでは高速道路と競合する路線の利用が急減。「道路だけでなく、同じ民間事業者として平等に税金を使ってほしい」(日本旅客船協会)として、税の減免などを求める声が上がっている。

値下げ原資は国民の税金 反故にされた民営化の原則

料金の値下げの仕組みはかなり複雑だ。まず、2008年10月に、平日深夜5割引きや平日夜間3割引き、休日昼間の普通・軽乗用車の5割引きが決まった。これは約10年間の限定措置。それに上乗せして、今年3月から追加の景気対策の一環として、土日祝日の上限料金1000円を柱とする、さらなる割引が導入されたのだ。大規模な値下げが2回に分けて実施され、割引の対象はETC搭載車に限定された。

詳細を決めた国土交通省は「財源が限られた中で、観光振興による地域活性化の声にも配慮した。車種や時間帯、曜日などメリハリをつけたメニューを円滑に処理するには、ETCを活用せざるをえなかった」(有料道路課)と説明するが、仕組みが複雑かつ不公平な点は否めない。

急きょ決まった政策だったため、ETC車載器が品不足になるという事態も発生した。大手自動車用品チェーンは「3月に助成が始まって数日間で在庫は品切れ状態になった。解消するには7月くらいまでかかりそう」とこぼす。「料金値下げでいちばん潤ったのは、実はETCメーカーと、ETCを所管する国交省の外郭団体ではないか」(関係者)という皮肉まで飛び出す始末だ。

今回の高速料金値下げという政策が高速道路の利用者の歓心をかき立て、不況にあえぐ観光地を潤したのは事実だろう。しかし、値下げの原資に使われたのは紛れもない国民の税金だ。値下げの狙いが景気対策だというのなら、その効果を冷静に検証する義務がある。そして、それ以前に、今回の値下げはいくつかの深刻な問題をはらんでいる。最大の問題点は、税金投入によって、小泉政権時代に決められた道路公団の民営化の原則が反故にされた点だ。

民営化見直しを訴える「高速道路問題を考える会」の織方弘道氏は、「今回の値下げは、間近に迫った選挙対策としてのバラまき。旧道路公団の債務40兆円を、税金を使わずに45年間で全額返済するという約束が完全に無視された」と批判する。

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