アップルが「iPhoneの次」に狙っていること スマホ成熟期を迎え、ビジネスの力点に変化

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このところのアップルは、もちろんハードウェアの新製品開発にも継続的に力を入れる一方で、複数のコンピュータデバイスをクラウド型のストレージサービスで結びつけ、特別な使いこなしを意識しなくとも、もっとも手近にある、もっとも使いやすいデバイスを使って情報を操れるよういくつかの機能を導入、改良してきた。

複数のコンピュータ機器を、ユーザーが同時に使いこなせるようにするというテーマは、パソコン、タブレット、スマートフォンと複数デバイスを同時に操るようになった現代になって、クラウドコンピューティングの流れとともに重要性を増したと思われているが、実際にはパソコンの小型軽量化が進んだ1990年代前半から、ずっと継続的に取り組まれ、決定的な解決策なく持ち越されてきたテーマだ。

「同期する」という古い概念をどう断ち切るか

当時は、出先に持ち歩くノートパソコンとオフィスや自宅で使うデスクトップパソコン。両方が管理する”情報の差”を、なるべくスムースに意識することなく連動させるか?をテーマに雑誌に連載を持っていたこともある(高価なパソコンを2台も使うことから”ブルジョワなパソコンライフ”という奇妙な連載名を付けられてしまっていたが…)。

”同期”という概念が生まれ始めたのはそのころで、PDA(パーソナルデータアシスタント)というデバイスが登場すると浸透していった。しかし、あくまでもコンピュータで管理する情報の一部を切り取り、小型の何かに複製を持つという概念で作られていた。

この古くて新しい問題が、猛烈に技術が進歩する中でなかなか解決しなかったのは、情報を操る主体が1つではなく、複数になっていったからだ。PDAのような”アシスタント”あるいは”コンパニオン”ではなく、それぞれが独立したコンピュータになってくると、適材適所で入力源としても使い分けが自然にされるようになる。

様々な場所で、いろいろな機器を使って情報を操ると、”同期”を自動的に行いたくとも「この情報、どちらが最新でしょう?」と利用者に尋ねなければならなくなる。

この問題を解決するには、どの端末とも切り離された領域に”元帳”となる情報倉庫を持ち、各端末で管理した情報を可能な限りすばやく元帳に反映させることだ。企業向けの情報システムなら、サーバをを中心に据えてそのような仕組みになっていることだろう。

しかし、自由かつ簡単な使いこなしを求め、自宅にサーバを置くこともない一般コンシューマには通用しない。そんなコンシューマも、古くて新しい問題を解決する道具を手に入れはじめた。クラウド型のストレージサービスだ。

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