学生はもっと世界を見よう

インダストリアルデザイナー・榮久庵憲司氏③

えくあん・けんじ 日本のインダストリアルデザイナーの草分け。1929年東京生まれ。東京芸術大学卒業。キッコーマンの卓上しょうゆ瓶やヤマハ発動機のオートバイシリーズ、成田エクスプレスなど幅広い工業製品のデザインに携わる。

よいインダストリアルデザインとは何か。私は必要性、つまり生活するうえで必要なものを満たすことが、まず重要と考えています。同時に面白いという要素。その製品が面白く使われることが大事です。必要かつ面白いこと、これがよいインダストリアルデザインの条件だと思います。たとえば自動車は移動の必要性を満たす乗り物です。安全性のために密室にすると、男女がじゃれ合ってもいいし、一人瞑想に耽ることもできる。それが面白みとなる。

 必要で面白いことを考え出すには、比較できるいろいろなことを知るべきです。それを教養と言うのでしょうが、たとえば博物館へ行き、人類はどういう経過を経て、モノと接するようになったかを知る。そして今欠けているものは何か、どうすれば面白くなるかを考えるのです。

日本はデザイン後進国になってしまう

ただ日本人は面白いことを考え出す部分が下手なようです。最も上手な民族は中国人だと思います。黒いフナを金魚にするなんて最高です。今ならバイオ技術と言うのでしょうが、時間のかかることです。そんなことを3000年以上も前からやっている。はしを考え出したのもすごい。5本の指を使って2本のはしを操れば、軟らかい豆腐も持てるし、納豆もかき回せる。片方の指を動かして片方の指を動かさない使い方など、よく考えたと思います。

日本でもう一つ足りないことは、デザインへの国からのサポートです。ドイツ、イタリアなど欧州の国々は、デザインに関連したさまざまなイベントに国が補助金を出します。韓国でもそうです。一昨年、韓国に出張したとき、盧武鉉大統領(当時)は記者会見を開いて韓国のデザイン政策について明確に語っていました。日本でも昭和25年ごろから20年間ぐらいは政府によるサポートがありました。しかし、最近はめっきり減っています。デザインについて国の支援はもう必要ないと考えているようでは、日本はデザイン後進国になってしまう。ベトナム、シンガポール、マレーシアなどデザインに力を入れる国が増えています。

日本はデザインについての教育への補助金も少ないと思います。優れた生徒には、卒業制作の資金を一部援助するだけでもずいぶん違う。本当は大学入学直後の半年か1年は、世界中を見て回るとよい。欧米や、アジア、アフリカと世界にはいろいろな人種がいることを18~19歳で身をもって感じてから勉強に入る。そうすると勉強の幅が広がり、関心の糸口が増える。そのことがデザインの教養に通じると思います。

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