本好きのためのマンション?《それゆけ!カナモリさん》

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 銀座・東京駅至近の月島エリアは単身者やDINKSに人気である。そんな月島に既に住んでいる人の住み替えを狙っているという。年代や家族構成だけでターゲット設定をしているのではないところがユニークだ。

 本好きは本を手元に置きたいよな。間違ってもブックオフに売らないよな。でも、置き場所に困るだろう。天井まで蔵書を整然と並べられたらさぞうれしいだろう。そうしてできた物件なのだ。

 さらに、本好きはどんな行動をするかを想定して、販売促進も展開されている。

 「本好きは本屋に行くよな。Amazonとかじゃなくて」というわけで、月島近隣の書店4軒に交渉。「本棚の付いているマンション」のブックカバーとしおりを各書店で配布する。しおりをモデルルームに持参すれば、本好きが喜ぶ図書カード1000円がもらえる。リターンは通常のチラシより断然よいという。

 マンション販売は大規模物件でない限り、通常は建設予定地の近隣に、本人か親戚や知人が居住している人が購入する場合が多い。クチコミが極めて重要なのだ。まして、この物件のようにターゲットが絞り込まれていれば、「そういえばあいつ、本好きでマンション探してたよな」と紹介につながるケースも多いだろう。

 この物件の販売住戸数は28戸。小規模物件ならではの展開ではあるが、ターゲット像を明確にして絞り込み、ポジショニングを明確にした好例だといえるだろう。マンション不振の昨今、当たり前な物件では苦戦を強いられるのは目に見えている。


《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年5月15日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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