「最強ホッチキス」で挑むマックスの欧米攻略作戦、新「規格」引っ提げ成熟市場突破を狙う

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たとえば米3Mが開発した、のり付き付箋ポストイットは70年代後半、米経済誌『フォーチュン』の「グローバル500」に載った大企業の社長秘書にサンプルを送って需要開拓に成功。「どんな広告よりも、秘書たちの使ってみた評価が、現在の付箋文化を創り出した」と山田教授。バイモと通底する必要条件は「とにかく使ってもらう」ことであり、国内での体験キャンペーンは確かに正鵠を射ていた。会社側は大手文具チェーンでの体験キャンペーンや、日本企業の現法から攻め入るなどの作戦で売り広げながら、現地の通販カタログでページ獲得に努める方針。三井田社長は「(20枚が限度の)10号とは違い、チャンスはある」と自信をのぞかせる。

マックスの2010年3月期業績予想は初の減収減益計画(前期比4・9%減収、営業利益30・2%減)。景気の影響を受けやすいくぎ打ち機や住宅設備が苦戦するためだ。そうした意味でもバイモの今後の役割は大きい。小型ホッチキスは長らく高単価の自動機に稼ぎ頭の座を明け渡してきたが、人口から単純計算すれば、合計で日本の5倍前後の欧米市場がバイモを待っている。

過去、成熟市場に挑戦した例として、米アップルが独特の操作性を備えたiPodで携帯音楽プレーヤーの勢力地図を塗り替えた反面、独自のメモリースティックやMDに固執したソニーは苦戦を強いられ、明暗を分けた。この天と地の差が規格戦争の陥穽であり、魅力でもある。対欧米のキラーアイテムという大役を担うバイモの実力は国内で証明されたとはいえ、“モノがいい”だけでは必ずしも成功できない。それがデファクト争いのシビアな現実。“文化攻略”の舵取りが注目される。

(内田史信 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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